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メリー・ポピンズ リターンズの赤色の秘密を考察【ネタバレなし】

さかかな さかかな


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「メリー・ポピンズ リターンズ」の赤色について解く

「メリー・ポピンズ」の原作者は「赤色が嫌いだから、映画には赤色は使ってはダメ」とあのウォルト・ディズニーに条件を出したという逸話を知っていますか?

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出典:IMDb

このコラムは、ちょっと”上から目線”でエレガントな彼女の生い立ちを、ディズニー映画
「メリーポピンズ」
「ウォルト・ディズニーの約束」
「メリー・ポピンズ リターンズ」
の3作品について赤色に着目し、考察した映画コラムです。

・・目次・・

1.「リターンズ」はバンクス一家の20年後の物語
2.あの日々を忘れてしまったマイケルとジェイン
3.2つの物語をつなぐ「ウォルト・ディズニーの約束」
4.3つの作品をつなぐ赤色の役割
5.メリー・ポピンズが救ったのは大人になった私たち

※「リターンズ」のネタバレなし
※「メリー・ポピンズ」「ウォルト・ディズニーの約束」の物語の概要は一部解説します

「メリー・ポピンズ」を見ている人は〈3〉から、「ウォルト・ディズニーの約束」を見ている人は〈4〉まで読み飛ばしていただいて大丈夫です。

・・・・・

アカデミー賞13部門ノミネート&5部門受賞したパメラ・L・トラバースの児童文学書を基に1964年に公開された「メリー・ポピンズ」が、新たな極上のエンターテイメント作品「メリー・ポピンズ リターンズ」として戻ってきました!

出典:YouTube
 

メリー・ポピンズが魅せるのは、カラフルで“美しい魔法”の数々。

厳しくも優しく包み込むメリー・ポピンズの砂糖一匙の魔法。観る者の日常をハッピーにしてくれること間違いない映画です。

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出典:IMDb

「メリー・ポピンズ リターンズ」(原題:Mary Poppins Returns)が2019年2月1日に日本で公開されました。

『ディズニー史上、最高のハッピーを』という広告とともに、50年ぶりの続編に非常に話題になっています。

「メリー・ポピンズ」(原題:Mary Poppins)は1964年に公開されたアニメと実写が融合したミュージカル映画。

ミュージカル映画の成熟期である60年代に「サウンド・オブ・ミュージック」「マイ・フェア・レディ」に並んで発表されました。

世界中で愛されている「メリー・ポピンズ」は子どもだけでなく大人にもイマジネーションを与える作品です。

しかし、この「メリー・ポピンズ」。実は彼女が私たちをイマジネーションの世界に連れだしてくれる作品となるまでに、多くの逸話があることはご存知でしょうか?

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出典:IMDb

原作者であるパメラ・L・トラバースとウォルト・ディズニーとの制作秘話が映画化した「ウォルト・ディズニーの約束」

そしてその話を知ってリターンズを見ると、「ウォルト・ディズニーの約束」での彼女と彼の経緯がこっそりと息づいていることがわかります。

気づける人には気づけるようにと。

そんな少しだけブラックな、だからこそディズニー史上最高な夢を届けてくれる「メリー・ポピンズ リターンズ」についてお話しましょう。

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出典:IMDb

このコラムはトプシーなお話です。トプシーゆえに少しだけ長くなってしまうことはご承知ください。

1.バンクス一家の20年後の物語「メリー・ポピンズ リターンズ」

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出典:Amazon

前作「メリー・ポピンズ」あらすじ

「メリー・ポピンズ」の舞台は1910年のイギリス、ロンドン。桜町通り17番地に住むバンクス一家。

銀行の幹部で、家族よりも会社優先な厳格な性格の父バンクス氏と子育ては乳母に任せっきりなバンクス夫人。

聞き分けのない2人の子ども、長女ジェインと長男マイケル(マイケルはリターンズの父親)。

バンクス氏はジェインとマイケルのために厳しい乳母が必要だと言い、新聞で募集をかけます。

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出典:Amazon

翌朝、どこからともなくコウモリ傘で1人の女性が空から舞い降りてきます。そう、彼女の名前はメリー・ポピンズ。

優しくて美しい乳母がやって来たと、子どもたちは大喜び。

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出典:Amazon

メリー・ポピンズと子どもたちは、彼女の友人である大道芸人のバートと美しい絵の国で遊んだり、空中に浮いたままお茶会を楽しんだり。

ロンドンの町並みが見下ろせる美しい夕焼けのなかで、煙突夫と一緒に屋根の上でタップダンスをしたり。

子どもたちはメリー・ポピンズとかけがえのない日々を体験します。

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出典:Amazon

しかし、生真面目で正しくことが進まないと気が済まないバンクス氏は、メリー・ポピンズをあまりよく思っていません。

仕事ばかりのバンクス氏ですが、ある時ジェーンとマイケルが起こした事件によってバンクス氏が銀行をクビになってしまいます。

メリー・ポピンズは家族の仲を修復し、本当の家族愛を与えることはできるのでしょうか……?

 

「メリー・ポピンズ リターンズ」あらすじ

メリー・ポピンズがバンクス一家の元を離れてから20年後。1930年代のイギリス、ロンドンは大恐慌を迎え、暗く厳しい時代でした。

バンクス家の長男であり、かつて少年だったマイケルは3児の父親になっています。

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出典:IMDb

厳しかった父親とは正反対に画家をしていましたが、家計が苦しくなり、その昔、父や祖父が働いていた銀行で臨時の仕事に就きます。

そんな状況のなか、マイケルの3人の子どもたちは「自分たちがしっかりしなければ」と躍起になるが空回りばかり。

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出典:IMDb

そんな中、さらに追い打ちをかけるように融資の返済期限切れで、

まさかのマイケル自身が努めている銀行によって、あの桜通り17番地の家を差し押さえられてしまうピンチ!

そのとき、あの完璧な魔法使いメリー・ポピンズが再び風に乗ってマイケルの元に舞い降りてきて……!

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出典:IMDb

今度はどんな魔法で、夢を見させてくれるのでしょうか……?

 

2.スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャスを忘れてしまったマイケルとジェイン

メリー・ポピンズが再びやってきたことに驚くマイケルとジェイン。

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出典:spotern

彼女の容姿がまったく変わっていないことにも驚きつつも、2人はメリー・ポピンズとのあの日々のことは幼少期の思い込みであったと思っていました。

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大人になった彼らを横目に、前作の設定を引き継いだメリー・ポピンズの不思議な仕草や監督の愛を感じさせる演出の数々は、ファンをこっそり、そしてにやりと笑わせてくれます。

桜町通り17番地の家の外観も内装も変わっておらず、銀行もそのまま。

不思議な階段のぼりや鏡の中に映るもう1人のメリー・ポピンズなど。

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出典:IMDb

リターンズでは、メリー・ポピンズの友人であり、物語の案内役だったロバートは、残念ながら世界中を旅しているようで不在ですが、

グリニッジ天文台が時刻の指標にしていたという噂のおとなりに住むブーム海軍大将。

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口の悪い家政婦のエレン。夢と現実が入り交じる幻想的なアニメーションに登場したペンギンたちなど懐かしいキャラクターたちが再び登場します。

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また街の設定もほぼ変わらずに、オープニングとエンディングに流れるロンドンの町並みの風景は「メリー・ポピンズ」のまま。

一方で、50年の時代を経て格段にグレードアップしたCGの違和感のなさには唸らされます。

出典:YouTube
 

ボウルに描かれたミュージックホールの世界で歌とダンス。バスタブの底から神秘的な海中探検。

登場シーンの嵐の前のような不穏な曇り空と対比しされた、エンディングの晴れ渡る空のシーンも素晴らしく、

前作では入ることのなかった公園の中、街の様子なども伝わってきます。

実写とアニメーションが融合されたファンタジー映像としての満足感もさることながら、舞台の都市的な広がりもあり、

前作のファンはもちろん、前作を知っていなくても「メリー・ポピンズ リターンズ」を十二分に楽しめる設計となっています。

 

本作は、監督の「メリー・ポピンズ」への愛がそこかしこに本当に散りばめられています。

なにより銀行の頭取の登場と、そしてあの話には、本当ににやにやさせられます。

「メリー・ポピンズ」ではバンクス氏の家族への愛や家族と過ごす時間の尊さをとき家族を救う物語でしたが、

「メリー・ポピンズ リターンズ」は子どものときにたくさん持っていたはずのイマジネーションの大切さを思い出す物語なのです。

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出典:IMDb

それはまるで私たちが日々の忙しさや心配ごとによって、大人になるに連れて失いがちな想像する楽しさをメリー・ポピンズに諭されるよう。

「メリー・ポピンズ リターンズ」はイマジネーションさえあれば、どこへだって、なんだってできるという夢を思い出させてくれる映画なのです。

3.2つの物語をつなぐ「ウォルト・ディズニーの約束」

この「メリー・ポピンズ」と「メリー・ポピンズ リターンズ」をつなぐもう一つの物語があることを知っているでしょうか。

その作品とは、2013年に公開された「ウォルト・ディズニーの約束」(原題:saving Mr.Bunks)です。

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出典:IMDb

「ウォルト・ディズニーの約束」あらすじ

実は「メリー・ポピンズ」には〈かのウォルト・ディズニーが原作者パメラ・L・トラバースに所望してから、20年も映像化できなかった〉という逸話があります。

彼女の拒絶の理由を彼女の回想シーンとウォルト・ディズニーがとの現代の物語とが交互に映し出されながら解き明かされていきます。

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物語の中盤では2人の物語の生みの親の想いが衝突が描かれます。

パメラ・L・トラバースはディズニー映画に対して「ミュージカル、アニメーションなんてもってのほか!」と断言し、映画製作は難航します。

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「メリー・ポピンズ」の代名詞といえるファンタジーなミュージカルを拒絶。他にも、

「バンクス氏はひげじゃない」
「桜街通り17番地ではなく、桜通り17番地出ないとダメ」
「映画で赤色は使ってはダメ」

と言いたい放題。

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私たちの知っている「メリー・ポピンズ」は実写と融合したアニメーションが素晴らしく、空想力をかきたてられ、歌は夢にあふれ、ダンスはコミカルです。

「そうね ちょっぴり砂糖があるだけで苦い薬も飲めるのよ。ひとさじの砂糖があるだけで」

という「メリー・ポピンズ」で最も有名な歌をつくった作曲家であるシャーマン兄弟に「そうやって子どもを甘やかして出すのね」なんて言ってのけます。

「ウォルト・ディズニーの約束」はメリー・ポピンズのファンの人ほど、まさかそんな経緯があっただなんてと衝撃を受けるでしょう。

そんな厳格なパメラとのやり取りのすえ誕生したのが、私たちの知っている「メリー・ポピンズ」です。

ウォルト・ディズニーが原作に魔法の粉をふりかけ、ミュージカル映画として、私たちに夢と希望を届けられたこと。

そして、どのように全世界の人に「メリー・ポピンズ」が愛されるようになったのかということがわかるのです。

あれだけ頑なな原作者がいるにも関わらず、ミュージカルもアニメも入れてしまうのだから、さすがウォルト・ディズニーとしか言いようがないです。

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ちなみにパメラ・L・トラバースは、映画化に困ぱいし、その後「メリー・ポピンズ」の舞台化の話があがたときに〈「アメリカ人がいないこと」を条件に引き受けた〉という話もあるほど。

そんな深い対立があった「メリー・ポピンズ」の続編が、2018年に制作されたとなったら、

彼女がいなくなったから……なんて邪推してしまうのも仕方ないかもしれません。

4.3つの作品をつなぐ「赤色」の役割

さて、ここまでちょっと上から目線な彼女が映画として誕生するまでの経緯を説明してきました。

そして、本作「リターンズ」と2つの作品の関係性を考察にするにあたり重要となるキーワードは”赤色”です。

なぜ赤色なのか

「赤色はいつの頃からか嫌いになったから映画では使ってはダメ」とパメラ・L・トラバースは映画製作チームに言います。

それまで彼女のこだわりに対して寛容な態度をだったウォルト・ディズニーが赤色の言及に関してだけは「製作する上、その条件だけは飲めない」と反論します。

「赤なしでは映画はとれない」
「舞台はロンドンだ」
「バスや郵便ポスト、衛兵の制服、英国の国旗もある」

しかしパメラ・L・トラバースは1歩も引き下がりません。

ウォルト・ディズニーとの契約書をちらつかせます。

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そして彼に「わかった、赤は使わない」と言わせます。

それほどまでに彼女にとって、赤色はどうしても許せないものでした。

赤色は彼女に〈父親〉を思い出させる色なのです。

それは彼女がメリー・ポピンズを生み出すきっかけでもあり、彼女が未だに〈縛られている過去〉でもあるのです。

「ウォルト・ディズニーの約束」の原題は”saving Mr Banks”。

バンクス氏、つまり〈父親〉を助ける物語なのです。

「ウォルト・ディズニーの約束」の赤色の役割は〈パメラ・L・トラバースを過去と縛るもの〉と定義できるのではないでしょうか。

「リターンズ」の赤について│衣装編

では、ここで「メリー・ポピンズ リターンズ」の製作国アメリカ版のトレイラーポスターを見返してみましょう。

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青色の背景に溶け込むように描かれたメリー・ポピンズが身につけている印象的な赤!

強気で凛としたメリー・ポピンズにとてもよく似合っています。

赤を際だてるような濃青色がシック。

登場人物のポスターも同様な溶けだした濃青色に、はっとするビビッドな赤色。

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メリー・ポピンズにかぎらず、誰かしらの赤色を身にまとっています。

このために、オウムのステッキは前作の緑色から赤色に変更したのではないかと思ってしまうほど、赤色を際立てる色彩設計になっています。

(パメラがいたら「ダメ」と言われていたに違いありません。)

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そしてこの赤色はメリー・ポピンズにかぎらず、誰かしらは身にまとっています。

まるで記憶に刷り込もうとしているかのように「リターンズ」で、赤色は使われています。

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一方、メリー・ポピンズが赤色であることに対して、バンクス家はなぜか緑色を着ている率が高いのも非常に気になります。

緑色は赤色の捕色です。

補色とは、二種の色の光を適当な割合で混ぜると白色光になる時、その一方の色に対する他方の色のことを言います。

ファッション上では補色でバランスよくまとめるのは難しいが〈引き立て合う色〉であると言われています。

ここで写真を振り返ってみます。マイケルも、子どもたちも、ジェインも緑色です。

引き立て合う色を設定するからには、何かしらの意図があるのではないでしょうか。

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「リターンズ」の赤について│アイテム編

そして「メリー・ポピンズ リターンズ」ではウォルトが反論する時に例にあげたアイテムがすべて出てきます。

バスや郵便ポスト、英国の国旗も。下の動画の冒頭では、ジャックが登場したときに飛び降りる先が郵便ポストです。

 

わざとらしく登場する赤色たち。

本来これらのアイテムは背景であり、物語上ではなんの意味もありません。

50年の時を経て作られたメリー・ポピンズの続編です。イギリスであることは周知の事実なはず。

ビッグベンが写っていれば、舞台がイギリスであることは伝えられるのでばないでしょうか。

それにも関わらず、ウォルト・ディズニーが口にしたアイテムを出す目的とはなんなのでしょうか?

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リターンズの赤色は〈メリー・ポピンズという作品がパメラ・L・トラバースという生みの親から解き放たれたこと〉を示唆しているのではないのではないでしょうか。

「メリー・ポピンズ」の赤について

では、メリー・ポピンズでは赤色は使われていないのか?

結論から言えばNOです。使っています。

しかし赤色を使っているシーンを探してみると、意外なことがわかります。

・バンクス氏の家の外に咲く花
・バンクス氏が家で着るジャケット
・銀行員の正装であろう黒ジャケットの胸ポケットに赤い花
・銀行の会議室

なんだかひっかかりませんか?

そうです。赤色を身に着けているのは「バンクス氏」と「バンクス氏と同じ職場の人」だけなのです。

後にも先にも赤色の衣装が出てくるのは、このシーンだけです。
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つまり「メリー・ポピンズ」の赤色とは〈銀行に関与する人〉を表す色なのです。

ここまで読んでいて「いやいやいや、メリー・ポピンズだって、絵の中の世界で赤っぽい(茶色系の)ベルトをしていたり、

赤色っぽい(朱色系の)コートを着ているじゃないか」と思うかもしれません。

なぜ、メリー・ポピンズが身につけている色は赤色と判断しないのか。

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それは郵便ポストが物語っています。

実は「メリー・ポピンズ」の冒頭、大道芸人のバートが私たちを桜町通り17番地に案内してくれます。

その道すがら、実は薄く汚れた郵便ポストがあるのです。

その色は、決して赤色ではないのです。

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なぜならウォルト・ディズニーが赤色の代表とした色だから。赤色はパメラ・L・トラバースとの約束で使わないことになっていたはずです。

郵便ポストの色は薄茶けた赤色であり、朱色なのです。

となるとその類似の色である、メリー・ポピンズの衣装は赤ではなく、別の色だと判断できるのではないでしょうか?

けれどバンクス宅に着くと、そこにはやたらと明るい赤色の花が咲き、ド赤色のジャケットをまとったバンクス氏が登場します。

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パメラ・L・トラバースは「バンクス家の扉には壁と同じピンク色の花が咲いているの」と「ウォルト・ディズニーの約束」で説明しているにも関わらずです。

また、物語の終盤で銀行員の会議室が登場します。その部屋は赤いカーペット、赤いカーテン、頭取の座る椅子も赤色です。

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赤色は〈銀行の象徴〉なのです。

バンクス氏がある事件を起こして銀行を追い出されるときに、銀行の象徴である赤い花をもぎり取られるシーンがあります。

銀行を追い出されたバンクス氏が子どもたちと凧揚げをするシーンからもわかるように、銀行を示す赤色は〈子どもとの時間や愛情を奪われてしまった父親〉を暗示しているのです。

 

メリー・ポピンズが救ったのは大人になった私たち

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3つの作品の赤色の役割を整理します。

「メリー・ポピンズ」では〈子どもとの時間や愛情を奪われてしまった父親〉を、

「ウォルト・ディズニーの約束」では〈パメラ・L・トラバースを父親との過去を縛る色〉として表されています。

そして「メリー・ポピンズ リターンズ」では〈前作「メリー・ポピンズ」という作品がパメラ・L・トラバースという生みの親から解き放たれたこと〉を示唆しているのではないでしょうか。

まるで製作を難航させたパメラに対してウォルト・ディズニーが逆襲したかのように。

「メリー・ポピンズ リターンズ」の赤色は〈未来を示唆する〉色

「メリー・ポピンズ」であれだけ規制を受けた赤色を「メリー・ポピンズ リターンズ」ではふんだんに、そして印象的に使われていました。

しかし、それはデイズニーによる逆襲ではなく、パメラ・L・トラバース自身が縛られていた過去から解放され、彼女自身が「薬も砂糖で包みながらでも超えていこう」と

〈過去から許されたこと〉を象徴しているようにも感じられないでしょうか。

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彼女は、父親を許し許されたく「メアリー・ポピンズ」を生み出しました。

メアリー・ポピンズは家族であるという原作者であるパメラの気持ちをウォルト・ディズニーは汲み、「メリー・ポピンズ」に父親を助ける物語という彩りを与え、彼女の愛情を彼なりの解釈で昇華しました。

その表現が赤色でした。

そして、本作はその過去へ縛られている彼女を表現した赤色を今度はあえて使うことで、彼女ではなく、彼女が〈過去から解き放たれ人生を楽しむことを許されていることを伝えている〉ようにも考えてみると……。

「リターンズ」による〈赤色〉に対する彼女の要望への反故は、〈過去への決別〉と捉えることもできるのです。

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なぜバンクス一家はメリー・ポピンズの赤色と捕色である緑色を身につけていたのか。

それは「リターンズ」の物語のテーマが〈人生を楽しむこと〉そして〈人生には不可能な事など無いこと〉だからかもしれません。

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厳しい現実に夢を忘れてしまっていたマイケルとジェイン、そして子どもたち。

厳しくも優しく包み込むメリー・ポピンズの魔法は、一家を笑顔にしていきます。

保守的な緑色からイマジネーションによる〈未来を示唆する〉赤色へ。「リターンズ」の赤色には、そんな思いがあるのではないでしょうか。

過去の作品へのオマージュをふんだんに取り入れて、前作への敬意を示しながらも、新しいメセッセージを込めた映画。それが「メリー・ポピンズ リターンズ」です。

もしかしたら、本作はイマジネーションによって生みの親であるパメラを救いたかったのかもしれません。「saving Mrs P.L.Travers」なんて。

だから、メリー・ポピンズは象徴的な赤色を身にまとっていたのではないでしょうか。

だからこ、きっと、彼女が”自分に合った”風船を選ぶときのその風船は赤色なのでしょう。

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おまけの話

メリー・ポピンズでは物語の案内人であるバート役で起用されたディック・バン・ダイクですが、彼が同作内で二役していたのは知っていますか?

花をもぎ取る銀行の頭取であるミスター・ドース・シニアをやっていたのは、大道芸人バートを演じていた当時39歳のディック・ヴァン・ダイクなのです。

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そして、実は「リターンズ」でも2018年12月で91歳になったというディック・バン・ダイクがカメオで登場しています。

ミスター・ドース・シニアの息子であるミスター・ドース・ジュニアです。

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予備知識なしで見ると「あれ???この人、前作で笑い死んじゃったんじゃなかったけ???」と混乱するほどそっくりです。

そっくりというよりも、本人なので当然なのですが。

こんな時間の経過に遊び心をもって、そして誠意を持って制作された「メリー・ポピンズ リターンズ」はきっとあなたの日常もハッピーにしてくれること間違いないでしょう。


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