死亡フラグの出方が、コナン並みにすごい映画。
今回は映画「フォルトゥナの瞳」について書いていこうと思うのですが、『コナンが現れる場所に死体あり』と同じように、フォルトゥナの瞳(死ぬ人が透けて見える目)を持つ主人公の周りには、不自然なほど死を連想させる人たちが大勢現れます。
ストーリーが進むにつれ透けて見える人の数も増えていくのですが、後半に差し掛かる頃には、改札を通る人ほぼ透けて見えていました。
最後には恋人まで透けて見えてしまいます。
あと、これだけはどうしても言いたいんですが、回想シーンとか手紙のシーンで主人公(神木隆之介)の声だけが流れる部分、あれ、「君の名は」の瀧くんにしか聞こえませんでした。
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「僕は君を守りたいんだ!」的な心の声に続くセリフは「みつはー!」とか「忘れたくないもの…忘れちゃダメなもの…君の…君の名前は…みつは…!」を期待したのですが、「葵〜!」だったので、ガッカリしました。葵って誰だよ!(本作のヒロインです)
予告や映画の口コミを見ていると、ラブストーリーとしての要素が強いのかと感じていましたが、私はラストの大どんでん返しで女の腹黒さというか…ちょっと背筋がヒヤッとしました。
原作が百田尚樹というのを知らずに映画を観ましたが、自分の命を投げ打って大切な人を守る流れが、まさに百田尚樹だなぁと。「永遠の0」をラブストーリーとして展開したら「フォルトゥナの瞳」っぽくなる気がします。
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死を予知する映画とフォルトゥナの瞳の相違点
「フォルトゥナの瞳」は、死期が近づいた人が透けて見える『神の目』を持つ人物の視点で描かれた映画です。
こういう特殊能力系や人の死が予知できるものって、大体ホラーやサスペンスものが多いかと思います。
予知する系の映画でサスペンスホラーといえば
「ファイナル・デスティネーション」
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「デッドゾーン」
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を想像する人もいるかと思いますが、本作の場合「まじかよ…見えてるよ…」と思い、葛藤する主人公(慎一郎)がメインのストーリーでそれに付随する形で恋愛ものへとゆっくり移行していきます。
「ファイナル・デスティネーション」や「デッドゾーン」のように、ハラハラドキドキ要素は期待しないほうが良いでしょう。そういえば、次に死ぬ人がわかるという部分だけを切り取れば、「着信アリ」や「リング」もわかりますよね。
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(いやいや、画像怖すぎてこっちが白目むきそうになったわ…)
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次に電話がかかってきた人間が死ぬとか、ビデオを送られてきた人間は次に死ぬとか。幽霊側の都合に人間が完全に振り回されているのですが、相手が幽霊だからか怯え方がすごいです。
大体、「次に自分が死ぬ!」とか、「次に大切なあの人が死ぬ!」っていう局面を迎えた人間て、「着信アリ」とか「リング」みたいな感じに怯えるのが普通なんですよね。
「フォルトゥナの瞳」に出てくる瞳の持ち主は、まぁ、ざっと観ただけですでに瞳の持ち主3名いるんですけど、みんな割と冷静なんです。鋼のメンタルかよ。
※ここからはネタバレを含みます。
ラブストーリーとして単純に見ると感動する。だけど、よく考えるとゾッとする
主人公(慎一郎)は、人の死が見えた時、悩み、葛藤します。
映画自体は終始、主人公目線で続くのですが、クライマックスから彼女目線に変わります。
出典:映画.com
「実は、私もフォルトゥナの瞳を持っていた」
と語り出すシーン以降、ここが一番泣けるところらしいと口コミにはありましたが、私はここが一番ゾッとしました。
だって、ということは、彼女には電車に乗ってる人が透けている(もうすぐ死ぬ)ことも、幼稚園児が透けてることも、彼氏が透けていることも見えてたってことですよね(なのに、めちゃくちゃ冷静)
しかも、彼が飛行機事故の被害者だと話をしてくれた時、「自分もなの! あなたに助けられたんだよ」というカミングアウトだって、彼が生きてるうちに出来たということですよね(なのに、まるで人ごとのように聞いていた)
鑑賞後、「葵があの時カミングアウトしてたら、慎一郎を何らかの形で引きとめられていたら…」と思った人は多いかと思います。
自分の命を犠牲にしてまで運命を変えようとした慎一郎と、カミングアウトすらせずにいた葵が対照的で、映画では葵を美化しすぎているような気がしてしまいました。
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あと、飛行機事故と電車事故は、御巣鷹山に墜落した日航ジャンボ機墜落事故と、JR福知山線の脱線事故を連想させるような場面をあえて作ったのでしょうか。それが本作につながりや含みを持たせるための何らかの伏線であればよかったのですが、なぜ連想させるような言動があったのかが最後まで分からず、疑問を残したまま終わってしまったのが残念でした。
本作のテーマは選択
この作品のテーマ(伝えたかったこと)は、
ー愛か死か、その選択にあなたは涙するー
と書いてあるように、『選択』だと思います。
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過去の選択、未来への選択、そして現在の選択。人生にやり直しは効かないからこそ、小さな選択から大きな選択まで登場人物たちは苦悩していました。
そして面白かったのが、選択において人それぞれポイントが違うということ。フォルトゥナの瞳を持つ3人に至っては、人の死が見えた時の選択があからさまに違います。
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医師:人の人生に関わるな
主人公:助けたい!
彼女:見て見ぬ振り
選択がテーマの映画だから、その選択が正しかったのか、違う選択肢はなかったのか、観るものにも考える”選択”を与えているように感じました。
未来を変えてはいけないのか
人の死がわかった時点で何らかの行動を起こすということは、未来を変えるということなんですよね。
本作では、『人の未来を変えるのは神の領域に触れるから、代償として自分の命が削られる』と言われていました。未来をテーマにした作品て、割と「未来は変えちゃいけないんだ!」という言葉が付いてまわる気がします。
ドラえもんでは「過去を変えちゃったら、しずかちゃんと結婚できない! うわぁ〜ん、ドラえもーん」と、小学5年生にもなって鼻水垂らしながら泣き崩れるのび太がいたり。
映画「サマータイムマシンブルース」では、調子に乗って過去(昨日)を変えた大学生たちがことの重大さに気づき、「過去を変えたら未来が変わる!」と昨日と今日を行き来していました。
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とにかく過去を変えたら未来が変わってしまうというのは、常識らしいですね。もしも過去や今を変えられる能力をうっかり持ったとしても、変えちゃダメですよ。
特殊能力系作品はとにかく楽しい
特別な力を持つ特殊能力系作品は、サスペンス、ホラー、バトル系、日常系と、ジャンルを問わず幅広く創作されています。
私もジャンルを問わず、特殊能力系は大好きです。
・自分だったらどうするだろう? という想像力を掻き立てられる
・特別な力を持つキャラクターの悪い面も描かれているので、リアリティがあり楽しめる
・非日常を味わえる
のが、特殊能力系の醍醐味というか面白さだと思うのですが、本作「フォルトゥナの瞳」は特殊能力系作品の中でも比較的マイルドなものでした。日常生活をベースに進むストーリーだったので、非日常感は薄いものでしたが、だからこそより感情移入できた気がします。
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もしも死ぬ間際の人間が透けて見えたら、あなたはどうしますか?
もしもそれが自分の大切な人だった場合、自分の命と大切な人の命を天秤にかけることが出来ますか?
普段そんなことを考える人っていないと思いますが(私も普段は考えません・笑)本作は観終わった後、大切な人の顔を思い浮かべてしまうような、会いたくなるような、不思議な気持ちになる映画でした。
おっしまーい。
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[イラスト]ダニエル