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タクシーの中でスマホを落とした富田誠(田中圭)。物語はまさに、「スマホを落としただけなのに」たったそれだけのことから始まる、現代の闇を映し出したサスペンスホラー。
今回は映画のレビュー、コラムということで、ここらでいっちょ、興行収入とかランキングとか書いた方がいいのかな? 主題歌についても触れちゃう? と映画コラムを本メディアで書くのが初めてな私は思うのですが、もう映画について熱く語りたいです。
『「スマホを落としただけなのに」、マジでクレイジーだぜ・・・』
と呟きながら、語りたい。こんなにも心臓バクバクさせながら観た映画は久しぶりかも(映画を観ること自体も久しぶりなんだけど)。
最後の方なんてサスペンスというよりホラー映画だし、あわよくば映画館でチビってやろうかと思うほどの狂気をはらんだ展開。
監督がジャパニーズホラーの巨匠、「リング」を手がけた中田 秀夫ということで、カメラアングルとか登場人物(てか犯人)の表情とかホラー要素たっぷりで怖かったし。私なんて一人で映画を観たもんだから、「あそこのシーンやばいよね(語彙力)」「やばーい! こわーい!(語彙力)」とか語り合える相手もいなくて。だからこの映画コラムは、私と同じような人と、共感し合えるような記事になればいいなと密かに思っています。
ただ、怖い怖いでは「語彙力ない奴が映画コラムなんてもんに、片足突っ込むんじゃねーよ」と思われそうなので、熱量たっぷりどっぷりで「スマホを落としただけなのに」について書いていきます。
「イージーモード」と「ハードモード」2つの伏線が同時進行していく狂気をはらんだ展開
ストーリーは主に、5人の登場人物の視点で進んでいく本作ですが
- 稲葉麻美(北川景子)・・・本作の主人公で、誠の彼女。黒髪の美人。
- 冨田誠(田中圭)・・・スマホを落としてしまったうっかり者
- 毒島刑事・・・今回の事件を追う刑事
- 加賀谷刑事・・・新米の刑事だが、ITに強く今回の事件を追う要ともなる人物
- 犯人・・・狡猾なクラッカー
スマホを拾ったのは誰なのか。
連続殺人事件の犯人は誰なのか。
最後に待ち受けている、大どんでん返しの秘密。
この3つを追う形でストーリーは進んでいきます。
序盤、中盤に伏線を散りばめ、終盤一気に回収していく展開なのですが、本作では伏線の張り方が2種類あり
・事件に関わる伏線
・最後の大どんでん返しにつながる伏線
これが絶妙に絡み合っていて、かなり見応えのある作品だと私は思いました。
事件の伏線
出典:映画.com
事件に関わる伏線は、サスペンス系映画や小説が好きな人であれば「あ、これ多分伏線だな」と直感的にわかるものが多いかも。事件につながる伏線は中盤以降、見事に回収されていくのですが、そのスピード感には爽快感すら覚えます。
回収されるたびに狂気をはらんだストーリー展開。
こちらの伏線は、イージーモードで理解できるんだけど、クレイジーさ全開なのでご注意ください。
大どんでん返しにつながる伏線
最後の大どんでん返しにつながる伏線は、伏線であると匂わせながらも最後の最後まで私はたどり着けませんでした。そもそも素人ではそこまで考えは及ばないし、正直言っちゃうと最後の大どんでん返しは「ちょっと無理がある」。面白く予想だにしない展開なんだけど「そんなんだったら、世の中、北川景子だらけになっちゃうよ」と、映画を観た人にしか分からない感想をここに書き記しておこうと思います。
本作を観た人であれば「北川景子だらけになっちゃうよ」の意味を大いに理解してくれるだろうと思います。てか、そんなあなたと本作について本腰入れて語り合いたい。
こちらの伏線は、ハードモードで解くのが難しいのだけど、ヒューマン要素が混じり合う深いテーマとなっています。
全体的にはシリアスでありながら、スピード感と爽快感、緊迫感で手に汗握るという表現が当てはまる映画でした。
【犯人は家にいるだけなのに】スマホ、インターネットだけに踊らされる主人公
序盤「スマホを落としただけなのに」情報に操られ
中盤「スマホを落としただけなのに」殺人事件に巻き込まれ
終盤「スマホを落としただけなのに」秘密が明らかになる
全編通じて「スマホ」「インターネット」に翻弄される登場人物たちの動き。最後の最後、犯人から逃げ出す脱出方法でさえも、スマホの機能を使うというのが、ある意味徹底されていて滑稽です。
スマホに送られてくる情報だけを鵜呑みにし、お互いを信じられなくなる主人公とその彼氏。SNSでの繋がりやメッセージだけで物事を見るあまり、関係ない人を犯人だと思い込む、現代人特有の愚かさも忠実に再現されています。
そして、バカリズムの扱いが、ただただ、かわいそう。どうせ中盤(それより前の場合も)に「あ、バカリズムは犯人じゃないな」って誰しもが理解すると思うので言っちゃうけど、バカリズム、犯人じゃないです。
なのに本作での、バカリズムの犯人ぽいアングルと気持ち悪さ(本当は普通にいい奴)・・・しかし、バカリズム的にはかなりおいしい役どころだったと思います。個人的には、スマホを落としただけで猟奇的な殺人に巻き込まれるより、バカリズムが演じたストーカーの方がリアルにあり得る話すぎて、静かな恐怖を感じてしまいました。
出典:映画.com
次第に追い詰められていく主人公は、必死で逃げ惑い、影に怯え、翻弄(ホンロウ)されるんだけど、実際は誰にも追われていない。SNSのメッセージや、スマホから送られてくる情報だけで、錯覚してるだけというのも、現代の心の闇を映し出しています。
「スマホを落としただけなのに」なぜこんなことになってしまったのか・・・
「スマホを落としただけなのに」こんなことになってしまったのは、指先だけで操れる画面を、信用しすぎたからではないのか。
見る側のネットリテラシーが問われる本作は、間違いなくただのサスペンスホラーではなく、現代社会に対する問題提起作品です。
点と点がつながる爽快感と緊迫感
スマホは、映画が始まって5分もしないうちに落とされるのですが、私は「はっや!! スマホ落とすの、はっやっっ!」と心の中で三度見くらいする勢いでした。
タイトルが「スマホを落としただけなのに」ということなので、とにかくスマホを落とさなくちゃストーリーが始まらないもんなー。と、この時の私は今後待ち受けるストーリーを、全く知らずに臨んだので呑気に観ていたのですが・・・
出典:映画.com
・身に覚えのないクレジット会社からの請求
・SNSの乗っ取り
・ネットストーキング
・巧妙に仕組まれたスマホでのやりとりから、恋人同士のすれ違い
スマホを落としてから、不可解な出来事が次々と起こる中、蟻地獄のような闇へとハマっていく主人公。
ストーリー序盤では、「あー確かにこれはあり得るな。パスワードとか簡単に見破られちゃうもんなんだなぁ」と、まだ余裕を持っていた私ですが。ところがドスコイ、同時進行で猟奇的な殺人事件も起こり、最初は接点のなかったこの2つの事件、ストーリーはどんどんスピード感を増して行き、点と点が繋がって行きます。
スマホを拾ったのは、連続殺人犯。しかも狡猾なクラッカー
出典:映画.com
前半はスマホを落としてしまい、情報を操作され弄ばれるという設定から、猟奇殺人、連続殺人事件という流れで本筋へと移って行きます。犯人のサイコパスっぷりと、犯人役の演技がマッチしすぎていて若干ドン引いてしまいましたが、恐怖を煽煽(アオ)り立てる演出、私は割と好きです(笑)
しかし、いくら情報操作をされたからといって、いくら巧妙に物事が仕組まれていたからといって、目の前に提示されている事実は沢山あったのに・・・連続殺人犯に操られ誘導される主人公。
なぜ、人の本質を見ようともせず、ネット上の情報や、やりとりだけを信じてしまうのだろう
その疑問こそが、スマホやSNS、ネットに翻弄される今の時代を如実に映し出しているような気がします。
「スマホを落としただけなのに」タイトルが絶妙すぎだろ!!!
本作は【このミステリーがすごい!】大賞で、最終選考作品「パスワード」を改題、加筆修正を加えたものです。
最終候補に残るも落選。しかし、隠し玉(編集部推薦)として、加筆修正を加えた後に2017年4月に宝島社文庫より刊行された。
「パスワード」や「〇〇殺人事件」というタイトルではなく、「スマホを落としただけなのに」に改題したところが憎いです。恐らく、「スマホを落としただけなのに」というタイトルじゃなかったら、私は映画館に足を運ばなかったでしょう。
街角のクリエイティブにはコピーライターさんもいらっしゃるので、「ちょっと! このタイトル、貴方的にはどう感じますか?」というアンケートをとりたいくらい。(「え? 普通じゃん!」とか言われたら泣き崩れそう・・・)
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まぁ事実を言っちゃいますと、「スマホを落としただけなのに」は、スマホを落としただけではありません。なんか色々やらかしたんですよ。
しかし、このタイトルは観る側にとって想像を掻き立てるような、私は掻き立てられた側なのでハッキリ言い切っちゃんですけど、すごい・・・すごいタイトルです!(語彙力)
スマホを落としただけでは崩れない、人間同士の付き合いをしよう
この記事を読んでいる人で、「スマホ、持ってないんだよね」という人はいないのではないでしょうか? それほどスマホは私たちの生活に浸透し、なくては不安とさえも思う必需品となりました。
大切な写真も、アドレスも、予定も、スマホ一つで管理できる世の中。
相手の顔も見えないSNSでの繋がりだけで人間関係を構築し、初めて会う人でさえも取扱説明書を事前に配られているかのように知り尽くしている人々。
「スマホを落としただけなのに」で、主人公が深い闇へとハマってしまったのは、スマホを拾った犯人が狡猾なクラッカーで殺人犯だったからだけではありません。それよりもっともっと根本的な問題だと私は思うのです。
指先一つで解決しようとするのではなく、「あなたに会いに行こう。目を見て、お互い分かち合えるよう話し合おう」と少しでも思えていたのであれば、主人公はここまで深い闇にハマらなかったでしょう。すると、映画の公開もなかったし、なんということでしょう! 私が本作を観ることもなかったのです!
「スマホを落としただけなのに」は、映画を見終えた後「大切な人に会いに行こう。指先だけじゃない、直接心を届けに行こう!」そう思わせてくれる作品でした。
大切な人と、ぜひ一緒に観て欲しいと思います!(私は一人で観ましたけど)
おっしまーい!
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