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「レディ・バード」夢のような、つうか、思い出の空間

加藤広大 加藤広大


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2002年、あなたはどこで、何をしていましたか?

今から16年前の2002年、あなたはどこで、何をしていただろうか?

2002年はアメリカ同時多発手テロ事件の翌年である。ジョージ・W・ブッシュが北朝鮮とイラン・イスラム共和国、イラクに向かって「悪の枢軸」と吐き捨て「大量破壊兵器を開発もしくは保持」とみなし、イラク戦争へと向かっていった「あの」時代だ。

私たちはそれを、「ヤバいな」と思いつつもどこか遠くの国の出来事だと眺めていたが、クリスティンもまた、テレビやラジオから流れる火薬臭い知らせを「ここではないどこかで行われていること」のように聞き流し、過ごしている。

https://www.machikado-creative.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/06/ba1f117be6833100b171e6bc949decc9-e1528887351434.jpg出典:IMDb

本作は2002年が舞台なのでYoutubeもありとあらゆるSNSも無い。もちろんスマホも無い。携帯電話は出てくるがデカい。

クリスティンが住むサクラメントにあるのは高級住宅街と(クリスティン曰く)線路向こうにあるスラム、地域の人が通うスーパーやちょっとした商店、そして学校くらいだ。

上記がクリスティンの世界のすべてである。彼女にとって町の外は夢の世界であり、ディズニーランドみたいなものだ。この設定は監督と同年代、または田舎に生まれ、高校を卒業して上京したことのある人にとっては簡単に重ね合わせることができる。

例えば、私は群馬県の片田舎に生まれた米屋の倅だが近所には個人商店を拡大したようなスーパー、レンタルビデオ屋が一軒、薄暗い照明の酒屋、今より少しは活気のあったスナック街などがある。

高校を卒業するまでは、そこが世界のすべてだった。国は違えど、クリスティンが置かれている状況とさほど違わない。移入はしないが、簡単に代入できる。

これが、おそらく本作が異様に「共感」を推してくる理由だし、実際に共感を得ている仕組みであり、「俺が若い頃は携帯なんてなかったから共感できねぇよ」などの突っ込みを封殺する強度が凄い。

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