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「犬ヶ島」圧倒的情報量に完敗。グラフィックデザイナーが観た「デザイン」の凄み

加藤広大 加藤広大


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本作は、誰も確認しないような画面の隅まで、とにかく大量の日本語と「日本にまつわる記号」が映し出される。

さらに、アレクサンドル・デプラによる和に寄せた劇伴(残念ながら、今回書いている暇はない。素晴らしいけど)、看板から紙1枚にいたるまで、ありとあらゆる日本を連想させるアイテムが登場し、まるで滝行のように情報が与え続けられる。

ストーリー自体は単純明快であり、構造は過不足無く読み込めるが、この記号の連発に、日本人であればまずはクラクラしてしまうだろう。

https://www.machikado-creative.jp/wordpress/wp-content/uploads/2018/06/7ea69d03ad0b7609fff93202e57e3898-e1528063032981.jpg出典:IMDb

私の稼業はグラフィックデザイナーである。じゃによって、どうしても画面を一枚の画で捉えてしまう癖がある。そして私は日本人である。つまり日本語が読める。なので冒頭、あまりにも情報量の多い「神社」が映し出された瞬間、

「うぉぉー! ウェス・アンダーソンの神社だー! なんか猫が多い・・・猫が多いぞ! 狛犬ならぬ狛猫! 招き猫! 神主いいじゃんいい感じじゃん布の感じとか完璧じゃん。そこで! 神主が! 笏を出してっ・・・かし・・・柏手を打ったぁっぁぁぁぁぁー! 正しい、正しい日本だけど何か違うぞ、どこが違うんだ? そもそも全部違うけど、すっげえなコレ。動くのか? 横に動くのか? 左から右へうご・・・まだ動かないけどイエス! ウェス・アンダーソン! ところで襖に描かれた家紋に近い猫のグラフィックは・・・」

などと思う頃には、半裸の男3人が薄暗い体育館で和太鼓を叩き、記号としてではなく、フォントとしてデザインされた文字が踊るOPシーンに突入していたので、私は分析することを諦め、ウェス・アンダーソンが作り上げた世界に浸ることを選択した。つまりは完全敗北である。こんなもん、たった一回の鑑賞でわかるわけがない。

なので、とくに書けることもない、自分のなかで評価が定まっているわけでもない。しかし締切は迫る。どうすればよいか。ここで話を少し戻そう。私の稼業はグラフィックデザイナーである。

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