• MV_1120x330
  • MV_1120x330

『いぬやしき』で木梨憲武が起用された本当の理由。

シーズン野田 シーズン野田


LoadingMY CLIP

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

漫画原作の邦画が嘆かれて、もう何百年になるだろう。

「まーた漫画原作かよ!!」という人もままいるなか近頃はそんな声も薄れてきた気がする。もう何を言っても漫画原作の邦画大作はなくならず、漫画を原作にして制作するものが邦画であるという認識の世代も育っていることだろう。
むしろ漫画が原作じゃないことの方が邦画大作にとっては異端である。

さて、今回ご紹介するのは「いぬやしき」だ。屋敷を紹介するという意味では渡辺篤にバトンを渡したいところだが本作もまた、まごうことなき漫画原作映画である。
「GANTZ」「アイアムアヒーロー」「DEATH NOTE」など、漫画原作映画を得意とする佐藤信介監督がメガホンを取る。実際は、メガホンではなく、iPad を持って現場にはいたようだが。

漫画原作という響きに辟易ヘキエキするのは、キャスティングに対する憂いが含まれているからなのかもしれない。ジャニーズだったり、若い売り出し中の役者だったり、アイドルだったり、日本アカデミー賞常連役者だったりとテレビ局主導の人選で使い回しの見慣れた顔がコスプレ姿でスクリーンに集結する。漫画原作+常連俳優というこの二つ手堅さが胃もたれさせる。

例えば「GANTZ」では主人公の玄野計を二宮和也が演じ、「DEATH NOTE」では藤原竜也が、「アイアムアヒーロー」では大泉洋が主人公を演じているが、またお前かよ感が否めない。

素晴らしい役者様たちだし、集客も見込めそうだが、正直、胃もたれリストの中に入っている。寝る前に観たら太りそうだ。人気者じゃないともちろん主役は務まらないので(そんなこともないけど)、手堅くはあるが、なんというか配役に遊びがない。

さて、本作の主人公犬屋敷壱郎を演じるのは木梨憲武だ。これには思わず唸った。実際は唸ってないが、思わず唸ったと言いたい。なんとも絶妙な配役ではないだろうか?

出典:映画『いぬやしき』公式サイト

あの奥浩哉原作の変わり種漫画「いぬやしき」をどう映像化したのか?という部分も確かに気にはなりつつも「どーせ漫画原作だろ」という気持ちに”ノリ”をふりかけ、もりそばからざるそばに変容させる妙な一手のように、観たい気持ちが一気に高騰した。

木梨憲武が犬屋敷壱郎を演じるというだけで見事なキャッチコピーになっているのだ。一見、飛び道具的なキャスティングでもありつつ、ノリさんなら安心だという気持ちにもさせる塩梅で、近年キャスティングで観に行こうと決めた邦画は本作くらいだ。

木梨憲武といえば、「小市民ケーン」や「春は、来ない」など、ドラマやコントで多くのダメな男を演じてきた。本作でもまた、会社ではミスを連発し、家族には馬鹿にされるダメな親父を好演しているが、今このダメっぷりを木梨憲武が演じる意味は大きい。

昨今、とんねるずはネットの世界じゃ嫌われ者を買っている。フジテレビの終焉を象徴するように何十年と続いた「みなさんのおかげでした」が打ち切りになり、ノリさんのレギュラー番組は0本になったという。今やとんねるずは過去の遺産を食い潰した時代物と扱われているのだ。

そんなノリさんの姿が、本作のダメな親父の犬屋敷壱郎とかぶる。犬屋敷の起死回生物語が、ノリさんのそれとして機能しているのだ。だから絶妙だ。今主役級の大物タレントでこれができる人間は他にいないだろう。映画の主演も16年ぶりだというので期待大だ。ということで、久しぶりに表題のイラストを描いてみた。

街角のクリエイティブ ロゴ


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP