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「グレイテスト・ショーマン」は正真正銘のバーナムービー

シーズン野田 シーズン野田


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小人症の親指トム将軍を演じた、サム・ハンフリーは、骨格が正常に発育しないという病を抱えていた。

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出典:IMDb

その病気のコンプレックスもあって自殺を考えるに至った彼だが、その境遇が本作のモデルになった親指トム将軍に重なる部分がありオーディションの参加依頼が来たという。言ってしまえば本物に近いという理由でキャスティングされたのだ。しかし、劇中での親指トム将軍の動きは所々CGっぽさが漂う。これはサムがモデルになった人物よりも大きいからだという。サムは金八先生のモノマネのように膝で歩く演技で撮影に臨んだ。確かに彼はもともと障害を持っていたわけだが、そのCGっぽさのせいで「何で本当の小人を使わないのだろう?」と変に勘ぐってしまった(実際CGを使っていたのかはよくわかりませんでした)。

本作のメインテーマ『This Is Me』を歌い上げ、強烈な印象を残したるカーラ・セトル。

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出典:IMDb

彼女はが扮するのは男性のようにヒゲを生やした女。バーナムの見世物小屋には実際数人のヒゲ女がいたらしいが、このヒゲ女のヒゲがどうにもつけひげにしか見えない。彼女が出るたび、ヒゲダンスの音楽が頭の中でこだまする。凝った特殊メイクはお手の物のハリウッドで、ここにきてまた志村けんである。口元痒くないかなぁ、などと心配になってしまったが、劇中の歌声は本物で、高らかに歌い上げる(だからこそ、ヒゲが邪魔くさいという負のループ)。

そんな「偽物」とバーナムも自認するフリークスミュージカルショーは役者本人が歌っているのにもかかわらず、対として登場した「本物」としての役所レベッカ・ファーガソン扮する歌姫ジェニー・リンドの歌う『Never Enough』は、吹き替えだったりする。

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出典:IMDb

頑張って歌い上げているようにも感じるが、やっぱり彼女の声に感じない。このような偽物が本物を、本物が偽物を歌い上げるちぐはぐが、この映画の偽善感をさらに裏打ちする。

なのにもかかわらず、全体としてとても良い映画を観たような気分になる。得体の知れない感動に包まれる。本来ならカルトになりかねない奇形者だらけのこの話を「個性は大事!」という現代的なテーマに無理やり落としこみ、コッテコテの胃もたれしそうな音楽で題材のいかがわしさやドラマの薄っぺらさを帳消しにして大作ファミリー向けミュージカルとして触れ込むこの映画の姿勢は、奇形者に大胆なリングネームをつけ、ホラ話を撒き散らし、見世物ショーに客を呼ぶバーナムの精神をそのまま継承している。

よって、これは正真正銘P・Tバーナムによる、バーナムービーなのだ。

ザザンボがもしミュージカルで、音楽で感動させたら、親も落胆することはなかっただろう。

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