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「グレイテスト・ショーマン」は正真正銘のバーナムービー

シーズン野田 シーズン野田


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バーナムは、小人症や巨人症、ひげ女にシャム双生児など、世間の目を忍びながら暮らすマイノリティな人間を表舞台に引っ張り上げ、見世物にする際に、例えば黒人女性を「161歳でジョージ・ワシントンの元乳母」と触れ込み、アイルランド人でもないのに「アイルランドの巨人」と銘打ってみたりと、奇形にちょい足しコピーライトで人々の興味を引きつけ、フリークスショーを大衆化した。

当然ながら「161歳でジョージ・ワシントンの元乳母」なんているわけがないのだが、これだけはっきり「いるよ!」と言われると、もしかしたら本当にいるのかもしれないという気持ちが芽生えるのが人間というもの。20年前、東スポの見出しに大きく「志村けん死亡?!」と踊ったが、東スポがそう言うのなら志村けんは生きているに決まっている。なのに志村けんの死亡説はたちまち広がった。そんなわけない、と思いながらも同時に「志村うしろ! とあんだけ注意したのに・・・」という気持ちが芽生えた記憶がある。

ふと、子供の頃に突如町中に貼られた「ザザンボ」のポスターを思い出した。


出典:Amazon

「ザザンボ」は渡辺文樹監督作のカルト映画である。不気味なポスターの上に雑に書かれた「失神者続出!!」という文字がさらに不気味さを醸し出し、友人と興味津々でポスターを見つめていた。墓を掘り起こしているらしい! とか、ゲロ吐いた人もいたらしいとか、噂が噂を呼んでいた。

子供は観賞できないのでその内容は、両親のルポルタージュに委ねられる。もし失神したら明日からのおまんまどうしよう? という子供ながらの心配をよそに、帰ってきた両親は「ひとつもおもしろくない」と肩を落としていた。

そんなわけはない。なぜなら「失神者続出!!」なのだから。どんなヤバイシーンがあるのかを両親に問いただすが、本当にないという。だんだん親の態度に腹が立ってきた。なぜちゃんと説明しないのか。ヤバすぎて子供には言えないのか。そもそもどうして失神してこない? 親なら失神の一つや二つするべきじゃないのか? うちの両親は失神しないタイプなのか? 次の日「うちの母ちゃんもつまらないって言ってた」という友人の証言を得てもなお、自分は監督のホラ話をどこかで信じていた。

思えばこれが自分の人生で初の「見世物小屋的体験」かもしれない。鼻から胡散臭いとは思っていたが、どこかで何かを期待している自分がいるのだ。

胡散臭さとは「ウソかも」と「本物かも」が寄せては返す波のようなものなのかもしれない。

本作は、そんな「ウソ」と「本物」が入り混じる。

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