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2017年に日本で公開された映画「勝手にベスト10」

加藤広大 加藤広大


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2017_no1

2.お嬢さん

Reference:YouTube

そんな賞は無いのだが、個人的に今年の「ここまでやってもいいんですか?」賞であり、「こんなことやっても良かったんですか?」賞でもあり、「今、こんなことやれるんすか?」賞を総ナメにした傑作が「お嬢さん」である。

本作はとにかく「ハードコアポルノもかくや」というほどの濡れ場ばかりが強調されがちであるが、そのパンチラインすらスパイス程度にしかならないほどに、脚本は練りに練られ、鉄壁の知性と美的センスで作品全体が律せられている。豪華絢爛かつエログロキメラ感満載のセットや撮影センスも含め、何もかもがハイレベルであり、まるで分厚い、極上のミステリ小説を読んでいる気分になると言えば通りが良いだろうか。観ているだけでずっしりとした重さが伝わってくる映画は、そうそうない。

これがまた韓国映画あるあるで、一行たりともネタバレできないので「もう面白いからとにかく観て欲しい」としか言えないのだが、監督のパク・チャヌクが『オールド・ボーイ』を撮った13年後に本作を観られる幸せといったらなかった。

1.ありがとう、トニ・エルドマン

Reference:YouTube

私に褒められても何ら有難くないのは承知のうえで書くが、2017年の1位はマーレン・アデ監督「ありがとう、トニ・エルドマン」である。おめでとうございます。

いたずら好きの父親と、キャリアウーマンとして自分を抑圧しつつ生活している娘を中心として展開する人間ドラマは、観客にも「お前は人間か?」「ユーモアを忘れていないか」と問いかけてくる。「最近、なんだかギスギスしていてユーモアが足りないな」と感じている人はもちろん「俺は忘れてないよ、ユーモア」と高をくくっている人にこそ観て欲しい。

本作の何が素晴らしいか? を書いていくとランキング物としては長くなってしまうので一点だけ、「ありがとう、トニ・エルドマン」はテンポ(と間の取り方)が本当に美しく、とにかく贅沢な映画である。

冒頭に提示されるゆっくりとした物語の基礎テンポは、動きや会話、間を問わず、まったく崩れないままエンドロールまで守られる。しかし、決して中だるみをするような編集はされていない。これは同一のテンポのなかでも緩急が付けられ、グルーヴが存在しているということで、潜在的な基礎テンポに対する「ゆらぎ」が本作に独特の浮遊感、心地よさを与えている。

162分間、映画は一定のテンポを刻み続ける。良いことも悪いことも、何の変哲もないことでさえも、それぞれがゆらぎを生み出し、グルーヴを生成する。ゆらぎを生み出す力の根源はユーモアであり、映画内で刻まれるテンポは、人生の速度に限りなく近い。なんて思っちゃったもんだから、もう不動の1位。どこかで見かけたら、騙されたと思って観てください。本当に面白いから。

まとめ

そんなこんなで2017年に日本で公開された映画から10本選んでみたのだが、もちろん他にも良い作品はたくさんあった。それに、まさか同じ年にブレードランナーとスター・ウォーズの続編が観られるなんて10年前には思いもしなかったことだし、評価はどうあれ、おそらく映画史のなかでも重要な年を生き、劇場で楽しめたことをとても嬉しく思う。

2018年はどうなることやら、傑作・珍作の登場を期待しつつ、2017年を締めくくりたい。

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