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「永遠のジャンゴ」。その音楽の力はまるで「超時空要塞マクロス」

加藤広大 加藤広大


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アベレージの高い演奏シーンと、興味深いロマの生活

本作でファンが最も目ざとく観察する場面は、高確率で演奏シーンとジャンゴ・ラインハルトをどのように描くかであろう。というのも、ジャンゴ自身を正面から描いた映画というのは、ドキュメンタリーを除けばほぼ皆無であり、例えばウディ・アレンの「ギター弾きの恋」では、天才ギタリスト、エメット・レイを彼に重ね、ジャンゴはほんの一瞬、シルエットで登場する程度である。

また、同じく第二次世界大戦下のドイツでスウィングを愛し、夜な夜なもぐりのクラブで踊る少年たちを描いた「スウィング・キッズ〜引き裂かれた青春〜」では、ジャンゴを崇拝するギタリストの少年を「ジャンゴマン」として登場させたが、これも言葉とギターのスタイルを引き合いに出したのみである。

同じ舞台の作品として「ルシアンの青春」も挙げられるだろう。ルイ・マルはジャンゴの曲を効果的に使用した。

このように、今まで正面切って描かれることがなかったジャンゴ・ラインハルトであるが、彼を堂々と主人公にし、あまつさえタイトルまで「永遠のジャンゴ(原題:Django)」とした本作で、伝説のギタリストはどう描かれたのか。

映画の冒頭、おそらくライブ前の楽屋だろう。スーツを着たいかにもミュージシャン然とした男たちが、何やら騒ぎ立てている。どうやら「ジャンゴが未だ来ていない」らしい。メンバーの一人が迎えに行くと、彼は酒を飲みながら釣りの真っ最中で、半ば強引に会場に連行される。渋々と準備をはじめ、泥酔状態のなか舞台袖からステージに向かう。

https://www.machikado-creative.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/11/bf7c2e78d85bf93e99753dcea84d77f2-e1511996910597.png出典:Youtube

彼は舞台の中央に立つ。満員の客席、スポットライトが眩しい。商売道具であるセルマーのマカフェリを持ち、彼の指先を通じて音が放たれた瞬間、ファンの方ならば「よし!」と、安堵するはずだ。思わずガッツポーズを取ってしまう人だっているかもしれない。

当時ロンドンに残っていたステファン・グラッペリの不在は痛恨であるものの(史実なのだから仕方がない)音源を担当しているのは「ローゼンバーグ・トリオ」で、当のストーケロ・ローゼンバーグ自身もロマの家系である。その演奏は流石の一言で、特に文句がない、という文句が出そうになる。本家に比べると少しリッチな仕上げに感じるが、これが映画に良くマッチしている。

映画はギターソロからクラリネットソロへ。曲のテンポと対照に、ゆっくりとした贅沢なカメラワークが印象的だ。何より特徴的なのは、指板をアップにして運指を映すというライブ映像的手法が多く取られていることで、まるで教則ビデオではないのかというくらいに映すが、ネタがジャンゴなので許せてしまう。

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