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「永遠のジャンゴ」。その音楽の力はまるで「超時空要塞マクロス」

加藤広大 加藤広大


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・ジャンゴ・ラインハルト

ジャンゴ・ラインハルトはベルギー生まれのギタリストで、ロマ音楽とスウィング・ジャズを融合させたマヌーシュ・スウィングの開祖である。10代の頃にキャラバンの火事で火傷を負い、右足の麻痺と左手の薬指と小指に障害が残った。なので彼はギターを3本指で弾く。その超絶的な技巧のほどは曲を実際に弾いてみればわかるが、指が5本あっても足りない。言わずもがな本作の主人公である。

・第二次世界大戦

1939年から1945年まで、ドイツ、日本、イタリアの日独伊三国同盟を中心とする枢軸国陣営と、イギリス、ソビエト連邦、アメリカ、中華民国などの連合国陣営との間で行われた地球規模の大戦争。以下ネタバレになってしまうがドイツと日本とイタリアは負けた。

・ナチスによるフランス占領

1940年のナチスによるフランス侵攻とフランス第三共和政政府の崩壊によって開始された。タイムリーな話題としては、今年公開された「ダンケルク」も1940年にフランスで行われた「ダイナモ作戦」を描いているので、併せて観てみるのも良いかもしれない。本作の舞台設定は1943年頃、ナチス占領下のフランスである。

・ナチスとジャズ

ナチス政権下において「基本的に」ジャズ、黒人音楽はご法度であった。しかし、体制側にもジャズファンが居る。ので、ジャンゴのような音楽家に目をかける将校も存在している。フランスにおける規制は緩かったようであるが、劇場の壁には「ダンス禁止」と書かれた張り紙がしてある。

・ロマ

ジプシーとも呼ばれるが、ロマは北インドのロマニ系に由来する。移動型民族であり、キャラバンで放浪する(現在は定住者も多い)。ユダヤ人と同じく、迫害や差別を受けていた。特に第二次世界大戦中に行われたポライモス(ロマ絶滅政策)では多くの犠牲者が出た。本作は多くのロマが登場し、当時のフランスでの生活状況が描かれる。

・絶滅政策

ドイツでは大戦前より、ロマを劣等民族とみなす法律が施行され、選挙権の剥奪、商売の禁止、学校入学の禁止など、様々な制限が設けられていた。開戦後にドイツの占領地が広がることでナチスは大量のロマを抱えることとなり、「最終解決策」として多くのロマが虐殺されている。ナチスのユダヤ人に対するホロコーストは有名であるが、ロマも同等の迫害をうけていた。

・アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所

多くのロマはアウシュビッツの「ジプシー専用収容所」に収容された。そこでは家族全員が一緒に生活していたが、悪名高きヨーゼフ・メンゲレら医療研究者により、医学実験に利用されたり、ガス室で多くのロマが殺害されている。

これらが直接登場するシーンは無いが、ジャンゴがドイツ人医師に「この指は近親相姦による先天的なものだな」と決めつけられるなど、優生政策やメンゲレへの目配せがさらりと描かれている。

以上キーワードを踏まえたうえで、予告編はこちら。

Reference:YouTube

まとめると、舞台は第二次世界大戦、ナチス占領下のパリ。ギタリストのジャンゴ・ラインハルトは当時既に有名であり、フランス人/ドイツ人問わず大人気であった。が故に、ナチスのプロパガンダに利用されそうになる。ジャンゴはもちろん断り(彼の性格を考えるとただ面倒くさかったというのもあるだろうが)、自分の音楽を守ろうとする。しかし、ロマへの弾圧や一斉検挙は日に日に厳しさを増し、「戦争など我関せず」であった彼にとっても、身内や家族に危険が迫るにあたり、他人事ではなくなってくる。とうとう逃げ切れず、ジャンゴはナチス官僚が集う晩餐会で演奏することとなるが、当日、彼はある行動を起こす。

というのが簡単なあらすじである。こう書くと、かなり暗めの映画であると思われてしまうかもしれないが、意外にもそうではない。ロマの生活風景や演奏シーンなどに多くが裂かれており、占領下でありながら牧歌的な感じも漂う。笑えるシーンですらたくさんあるが、もちろんその裏には哀しみがペッタリと貼り付いている。

一方で、ナチスがその無慈悲な残虐さを振るうシーンは最小限に抑えられている。だからこそ、いざという時の一撃が効果的であるが、出てきた時点でナチス=最悪役であるのは誰しもがわかることなので、特段描く必要も無いということもあるだろう。

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