2.あるあるティーン・ムービー(Not Another Teen Movie)
まず邦題がぶっ飛んでいる。Netflixの深海に
邦題のとおり、数多あるティーン・ムービーの「あるある」を掻き集めマッシュアップした本作の予告編はこちら。
Reference:YouTube
ちなみに辛口映画批評サイト「ロッテン・トマト」では、30%の数値を獲得。なんと「ほぼ300」のほぼ15倍の評価である。
話の筋は、スクール・カースト上位のイケメンが、カースト下位の女子をプロム・クイーンに仕立て上げるというもので、最初はふざけていたイケメンも、徐々に彼女に惹かれていく。という、まさしくあるある展開である。
イケメンにキャプテン・アメリカ役でお馴染みのクリス・エヴァンス、相手役の女子に「グレイズ・アナトミー」、「SUPERGIRL」などのテレビドラマでお馴染みのカイラー・リーを起用したりと、配役という点では2001年の時点で先見の明があるものの、今となっては若干の無駄遣い感が否めない。
この手の作品において最重要なのは、「どんなネタを集めてくるか」、「集めたネタをどう料理するか」であり、目利きと技術、双方かなりの実力が要求される。そもそも「あるあるネタ」というのは意外と難しく、万人に「あるある(笑)」と思わせつつ、意外なフックも盛り込み、「パクり」だとは言わせない作品として仕上げなければならない。タランティーノ然り、目下エドガー・ライト然りである。
では本作の肝心要である「ネタ」はどうかと言うと、まったく光らないネタ集めのセンスが功を奏し、誰でも経験があるであろう10代特有の痛々しさが、ある意味「こんな映画を作ってしまった」という現実に直結しているという点では、とても興味深い。つまり面白いのではなく、全体的にスベっているので痛い。だが、余りのスベリ具合に寒いを通り越して笑えるシーンがあるというのも事実である。
ひとつだけ、何か褒めろと言われたならば、ヒロインであるカイラー・リーは、最初からとてつもなく可愛く、「ああ、こいつが髪の毛とメイクをちゃんとやって、ドレス着て出て来る瞬間、スローモーションになるんだろうな」と誰しもが思い描くシーンを、真っ向勝負で描き出したということであろう。そして、本作のヒロイン像は、高確率でパティ・スミスである。
こちらも「ほぼ300」と同じく、ハマる人はハマる作品だと思うが、それにしても、こんな映画に1500万ドルもの制作費をかける国に良く戦争を挑んだなと趣深い気持ちになれる奇作である。