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「アウトレイジ 最終章」まるで買物ブギーな臭いの話

シーズン野田 シーズン野田


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わてほんまによう云わんわ!!

映画といえば綺麗な女優さんがでてきてなんぼ、というお決まりがありますが、この映画、最初から最後までオッサンで満たされています。「オッサンオッサンオッサンオッサン!と大声で歌う笠置シヅ子の脳内で再生されるのです。

大げさでもなんでもなくて、加齢臭とポマードが混ざったような匂いが本当にしてくるんです。「全員暴走」じゃなく「全員防臭」にしてくれというレベル。まるで4D映画です。ネイティブ4Dと僕はよんでいますが、昨今ここまでオッサンしか出ない映画はあっただろうか、いやない(反語)。『おじさん図鑑』という本がありますが、「おじさん図鑑ザムービー」と言っても差し支えありません。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71J8g%2BD502L.jpg出典:Amazon

これもクライアントファーストじゃない原因なのかもしれませんが、そもそも北野作品にはあんまり女が出てきません。それでも過去2作のアウトレイジでは、若手俳優の影響も手伝ってか、そこまでオッサン感を意識することはありませんでした。しかし、今回は若手もメインではいないし、なによりも演技に迫力がない。迫力があれば「オッサン!」よりも「ヤクザ!」というキャラが際立って気にならなかったのでしょう。デブが痩せた途端、今度はハゲが気になるみたいなことだと思います。なにこの例え。何よりも監督の滑舌が悪くて、どこぞのクライアントだったら絶対に「字幕入れて」っていうレベルです。かつて寡黙だった北野武は、滑舌が悪くなればなるほど喋るようになりました。

この老いによる枯れ具合は、北野監督以外の役者さんにも随所で感じます。西田敏行は病気だったらしいですが、半ばほとんどエンジンの余力で動いているようなけだるい演技。塩見三省もまた脳出血の後遺症を抱えてか、うまく呂律がまわらない。(それよりも北野武の方が滑舌が悪いのはどういうことなんだろう)。

松重豊が飲み屋街を歩くシーンなんて「孤独のグルメ」にしか見えませんでした。これは意味が違うか。

岸部一徳を筆頭に、目の下のたるみが気になる人ばかりで「全員、たるみん」というコピーでもいいくらいです。各々の老い方がどうしても気になってしまい話が全然頭に入ってこない!! しかももっさり編集だから、やたらオッサンを眺めている気分になる。オッサンがどのカットも数フレーム多く、オッサンが途中で終わってくれません。

だがしかし、老いているとはいえ、存在感がないわけではありません。むしろオッサンの持つ存在感だけでこの映画は成り立ち、異彩をはなっているのです。

役者としてではなく人間としての強み。第一線で活躍してきた人たちは、別に演技なんてしなくたって、ただ、銀幕に登場し等身大の姿で立っているだけでもそこに自然に役柄が生じ、何者かになっているのです。特に、張会長のあの感じは一体なんなんでしょうか。金田時男という偉い人社長さんが扮しているのですが、役者じゃないんです。

https://pbs.twimg.com/media/DMotzF5V4AIE0cJ.jpg:large出典:「アウトレイジ 最終章」公式twitter

え? って感じですが、正直演技がうまいのかどうなのかもわからないけれど、存在だけで作品に強度を与えている。塩見三省も、後遺症で呂律が回らないことでむしろ、その存在感をより強固なものにしている。実生活と役所のシンクロニシティとでもいうのか、演技なんだけれど演技じゃないという妙な具合が映画を陳腐にさせていない。

役者の良し悪しってなんなんだろうと、改めて考えるわけですが、演技の素人だから面白いというのはまぁ、演出のすごさでもあるんですけどね。宮崎駿が声優を使わないの同様、北野武のキャスティングもドキュメンタリーだなぁと。

しかし、よくよく見るとみんな面白い顔してるよなぁ。たとえば洋画って、役者は全部外人だから記号化されるので、そこまで各々の顔の差ってわからないんだけれど、やっぱり日本人だからでしょうか、一人一人の顔の個性をダイレクトに受けることができるので、たとえ内容がつまらなくても邦画の場合は、顔を見ているだけで面白い。うちの祖母が、目の前に座っている人の顔を見てると笑ってしまい電車に乗れない、と言っていたのを思い出します。

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