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【少女漫画への憤り】なぜ主人公は山で足を滑らせ大穴に落ちるのか

ユーコ・ノラ ユーコ・ノラ


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それは「偶然」か「必然」か

さて、前置きが長くなったが、一言で「少女漫画」と片付けてしまってはやや乱暴な気もするが、今回は「少女漫画」と一括りにさせていただく。

少女漫画には、たびたび理屈抜きに「なんとかなる」ことで話が進むことがある。

私の場合、「漫画」であればジャンル問わず縦横無尽に読み漁るのだが、ことさら少女漫画(学園もの)においては、読み進めるうちにふつふつと湧いてくる矛盾やわだかまりが表面化することもある。

もう一度言う、私は漫画を愛している

その一方で、少女漫画で度々発生する“お決まりのハプニング”にも、一読者として言及すべきだと思った。

たとえば、学校行事で山登りがあったとする。
というか「ある」のだ。

たまたまヒロインと想い人が一緒の時に、たまたま山中で迷ったとする。
というか「迷う」のだ。

作中にこのような行事を入れ込むと決めた時点で、もう迷わせる気満々なのだ。

「学生の軍団が近くにいれば、本来かなり騒がしいはずなので迷子になることはないだろう・・・」という無粋ぶすいな詮索は許されないのだ。

さて、たまたま二人仲良く迷ったところで、痴話喧嘩が勃発する。

「もういいっ!」と言い放ちその場を立ち去ろうとするヒロインに、彼は「おいっ! 危ないっ!」と手を引っ張ろうとするが、刹那の差で彼女はこれまた都合よく用意してあった大穴に転げ落ちる。

数々のミラクルが重なるのが少女漫画の醍醐味である。

ここで「大穴に落ちて“イテテテテテ・・・”だけで済む話じゃなかろう」というのはいわずもがな、「無粋」というものである

そして都合よく陽が落ち、辺りは暗く、そして肌寒くなってくる。さらに時を追うごとに雨まで強まる始末だ。

そんな中、お互い妙に意識しはじめる。ヒロインの顔が赤らめいてくる。

照れて赤くなってしまったと勘違いした相手の胸にヒロインがなだれ込m・・・(以下略)。

「お、お前ちょ・・・ちょ待っ・・・」

ひどい熱のため無意識に彼の胸へ倒れ込んでしまったという、はたまたズッコケお決まりのシチュエーションである。

少女漫画には特にたびたび「都合よく=たまたま=運命」という、非常に都合のいい方程式が登場する。

もしかしたら「大穴に落ちる」と「恋に落ちる」を掛けているのかもしれない、と突然思ったりもしたが、おそらく気のせいだろう。

作中にこのような行事を入れ込むと決めた時点で、もう大穴に落とす気満々なのだ。

「都合よく、たまたま」と言いすぎて、ミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』の一節のような空気感になってしまったが、内容としては天と地の差、無論かすりもしないなので見逃してほしい。

本来こんなことを気にするほうが負けなのかもしれない。なぜなら少女漫画は夢を売っているのだから。そして私たちは夢を喰わせていただいている。それ以上でも以下でもないのだから。

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