また、強盗組の紅一点、バディ(ジョン・ハム)の恋人であるダーリン(エイザ・ゴンザレス)も良い味出しています。こちらはメキシコ系の美人さんで、デボラとは対象的な大人の女性です。
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さてさて、この方の出演作を見てみると「フロム・ダスク・ティル・ドーン」のTVシリーズですか・・・・・・なるほど。君もそっち系か。
もともとゾンビ映画とか吸血鬼モノに出てただけじゃねえかと、見立てが崩れそうではありますが、本当に素晴らしいキャスティングだと思います。
素晴らしい配役と言えば、ご紹介が遅れました。主人公のベイビーを演じるのはアンセル・エルゴート。
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本作では幼少期の事故の後遺症で、慢性的な耳鳴りを抱えており、それをかき消すために音楽を四六時中聴いているという、端的に言ってかなり複雑な役柄を見事に演じました。
今回、私が驚嘆したのは彼の身体能力でして、冒頭6分のシーンを観てもお分かりの通り、とても体幹がしっかりしています。リズム感もあり、音楽にも車にも、しっかりノレています。
この身体能力は、子供の頃からやっているバレエのおかげだそうで、大いに納得ですね。映画の中では、冒頭に続くワンショットのシーンだったり、何度か登場するカーチェイスのシーンだったりと、充分にスキルを発揮しています。
しかし、最も資質が活かされているのはそれらのシーンではなく、走って逃亡するシーンでありまして、今こんなに「走る」演技ができる役者さんって、そう居ないのではないでしょうか。
ヒロイン、主人公と紹介して参りましたが、脇を固める役者陣も
頭の切れる悪役オッサンをやらせたら天下一品のケヴィン・スペイシー。今作でもやっぱり強盗団を率いるボス、ドクを演じています。
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ケヴィン・スペイシーと言えば「ユージュアル・サスペクツ」ですが、カイザー・・・・・・おっとタイプする手が滑りそうになりました。
そして、「Ray」でレイ・チャールズを演じていたんだから少しは障害者には優しくできないのか! と突っ込みたくなるほどのキレたサイコ野郎にジェイミー・フォックス。
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もう、とんでもないジャイアニズム・メソッドで観客の感情を逆撫でしてきます。
また先程もちょっと書きました強盗チームの一員、バディをジョン・ハムが演じ、これまたブチ切れた怪演は必見。
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バリー・ホワイトの『Never Gonna Give You Up』が流れるシーンでの彼の演技は、ちょっと凄いですよ。
さらに、ベイビーの里親であり、耳と足が不自由な車椅子の老人、ジョセフをCJ・ジョーンズがこれまた見事に演じています。
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彼は実際に聴覚障害のあるパフォーマーでして、劇中ベイビーが使う手話を、撮影現場でちょっと教えていたりなんていうシーンを妄想すると、現実世界でも親子のようでぐっと来てしまいますな。
また、しれっと強盗チームにレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーが居たり、ベイビーの母親にはスカイ・フェレイラ、看守役にジョン・スペンサーと、ミュージシャンの出演が多いのも音楽ファンならば見逃せないポイントでしょう。ちなみに、良くある「ちょっと出て適当な演技」とかじゃあありませんのでご安心を。
映画は、ベイビー、デボラ、ドク率いる愉快な窃盗団の皆様を中心に
「さあ今日から堅気に戻って新たな人生だ」と思いきや、そうは問屋が卸さない。ドクから再び脅迫されて、再び裏の世界で働くこととなります。果たしてベイビーは堅気に戻れるのか? デボラとは結ばれるのか? 車のホイールのように回転し続ける運命の輪は正位置か逆位置か? 結末はいかに。といった具合で進んでいきます。