2017年7月19日、第157回直木三十五賞の選考委員会が築地・新喜楽で開催された。受賞作は佐藤正午の『月の満ち欠け』。デビューから34年経ったベテラン作家の受賞であること、岩波書店から刊行された作品では初の受賞であることなどから話題を呼んでいる。
佐藤正午とは?
佐藤正午は28歳の頃、『永遠の1/2』ですばる文学賞を受賞してデビューした。一人称「僕」の視点から語られる自堕落な日々の中で、不思議な出来事に見舞われ、いつの間にか思いもよらぬ事態に陥っていく・・・。
あらすじやモチーフだけ抜き出してしまえば既視感のある物語なのに、佐藤正午の作品が処女作から一貫して非凡な驚きに満ちているのは、構成の巧みさと、緻密な描写力による。分かりやすく面白いストーリーを、意外な切り口から並べなおす構成力。そして、「組み立て」に終始することなく、人間を立体的に描写する「まなざし」の深さ。ベストセラーとなった『Y』や『ジャンプ』を経て、今回の『月の満ち欠け』においてもその姿勢は貫かれ、文句なしのエンターテイメント作品でありながら人間の陰影を描き切った小説として、結実している。
『月の満ち欠け』あらすじ
主人公の
このまま夫婦仲に亀裂が入っていくのか? 瑠璃の奇妙な言動が深まっていくのか? と思いながら