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2017年上半期おすすめ小説 全8選

岡田麻沙 岡田麻沙


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2.『十代に共感する奴はみんな嘘つき』最果タヒ(2017)文藝春秋

若手のカリスマ詩人・最果タヒによる切れ味抜群の新作小説。
最果タヒは、最初の詩集『グッドモーニング』で第13回中原中也賞を受賞、4冊目の詩集である『夜空はいつも最高密度の青空だ』では石井裕也監督によって映画化され、その作品が第67回ベルリン国際映画祭・フォーラム部門に入選・・・など、華々しい「詩の経歴」のせいで、詩人としての印象が強い。しかし、小説のほうもキレキレで、独特の世界観を楽しめる。
17歳の女子高生である和葉は、隣のクラスの沢くんに告白をするが、「まあいいよ」という煮え切らない返事にブチ切れ、「やっぱやめよう」と告白を撤回する・・・というシーンから物語が始まる。この行動から伝わる通り、自分にも他人にも厳しい性格の主人公だ。けっして妥協をしない和葉は、例えば一度は告白をした相手であるはずの沢くんに対して、「ははは、きもい、この自分の感情を信仰している感じがなによりきもい」と言い放ったりする。ひどい。だけど、ひどいだけあって、かなり正しい。

沢くん、好きは、感情じゃないと思う。一致するのも変じゃない。嬉しいから付き合ってくださいとか、悲しいから付き合ってくださいとかそういうのだったら不確かすぎるし、だから好きは感情であってはいけない。突き詰めれば好きというのは尊敬と幻想に因数分解され、きちんと内容説明ができなければいけない。
引用『十代に共感する奴はみんな嘘つき』最果タヒ(2017)文藝春秋、Kindle版、14%

 

私は私を大事に思うそのことを絶対恥じないし、一番原始的だとすら思うよ。植物は光を浴びるために伸びていく。だから私も。
引用『十代に共感する奴はみんな嘘つき』最果タヒ(2017)文藝春秋、Kindle版、71%

読みながら姿勢を正し、何度も「ごめんなさい」と呟いてしまった。最果タヒの言葉は透明で鋭いので、読むとだいたい、どこかが傷付く。それでも関わりたいから本を買い、読んでしまう理由は多分、尊敬と幻想に因数分解できる。

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