静かで美しく、堂々たるSF映画
さてさて、「メッセージ」は、映像も音響も、映画を構成するすべての要素が静けさと美しさで律せられた堂々たるSF作品でした。
しかし、賛否両論巻き起こるのが世の常、分かり合えないのが人の性。巷間言われている問題点をちょっと補足してみると、原作にはサピア・ウォーフ仮説やノンゼロサムゲーム以外にも、いくつかの数学や物理学、哲学的要素が組み合わされています。
いっぽう、映画版は大胆にもそれらをごっそりと削り、サピア・ウォーフの仮説に特化することで間口を広げ、物語に入りやすくさせています。物足りないという方もいらっしゃるでしょうが、個人的には仕方なく、そしてある意味正解だったなと感じます。
大きく変わった終盤の展開もそうですね。こちらも賛否あるかと思いますが、緊迫する世界情勢、言葉が通じる人間同士の方が逆に疑心暗鬼になり、いがみ合ってしまうという現実、それを打破する方法、これは映画ならではの表現ですし、概ね好意的に捉えられました。
まあ、どんな意見も感想も「君も正しい、僕も正しい」なのですが、何よりも映画化が非常に難しいであろう原作をキッチリ「映画」に仕上げて届けてくれた制作陣は、万の言葉を費やして賞賛され、祝福されるべきだと思います。
そんなわけで「メッセージ」、原作と同様に何度も観るべき/観られるべき映画です。そして本作から得られる体験は、おそらく「あなたの人生の物語」でもあるのです。
未見の方は今からでも遅くありません。映画館へぜひ足を運んでみてください。私も未だ答えが出てないこと、たくさんあります。もういちど観に行こうと思います。
それでは、最後にいちばん書きたかったことを書いてコラムを終わりにしようと思います。
いや、本当にそうだと思いません?