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「メッセージ」宙に浮く巨大なばかうけ内での異文化コミュニケーション

加藤広大 加藤広大


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さあ問題発生です。人間とは姿形が大違いで、言葉もまったく通じない未知の生命体とコミュニケーションを取るためには、いったいどのような方法を用いるのが良いのでしょうか。どうするルイーズ・バンクス。

そこで彼女が用意したものは、一枚のホワイトボードでした。彼女はヘプタポッドに対して、音ではなく視覚的なコミュニケーションを図ろうとします。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/M/MV5BMDAzNDAxOGItNWFlMC00NjE1LTk2ZjctYzhiYTEzMjYxNzdiXkEyXkFqcGdeQXVyNTY0MTkxMTg@._V1_.jpg出典:IMDb

「え? ホワイトボードに書くの? アナログじゃない?」と思いきや、ルイーズがヘプタポッドとコミュニケーションをするプロセスには、言語学の専門家がアドバイザーとして参加していますので、これはギャグでも何でもなく、正当なやり方なんですね。

その専門家のひとり、カナダ・マギル大学のジェシカ・クーン言語学准教授は、初対面の宇宙人とお話するコツとして、まずは「どんなときでも自己紹介をするのが鉄則です」と『WIRED』UK版で語っています。

まずは素性を明かして自己紹介をし、共通の語彙を探し出して、なぜ、どのような文脈から相手はそう言っているのか、少しずつ、ゆっくりゆっくり理解をしていく。つまり、人間同士のコミュニケーションと同じですね。時間がかかり、根気のいる作業なのです。

ルイーズがホワイトボードに「HUMAN」という文字を書き自らを指し示すと、ヘプタポッドは触手から黒い墨のようなものを放出し、円を描き出します。それはまさしく彼等からの返事であり、以後、ルイーズが彼らとコミュニケーションを取る大きな手がかりとなります。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/M/MV5BMDY1ZjU5MjgtZjQ2YS00ODRhLTkxMTMtMDc2MmIxZmE2ZWJjXkEyXkFqcGdeQXVyNjUzMDk1NTI@._V1_.jpg出典:IMDb

まるで墨絵のような美しい文字ですね。これ、意味をなさない単なる絵ではなく、しっかり言葉になっているんです。実際にデザインチームは100文字分の辞書をつくり、ひとつのロゴグラムで簡単な会話ができるように考えられています。

なんと、「メッセージ」の制作陣はこの映画のためにひとつの言語を作ってしまったんですね。これまたルイーズがヘプタポッドの文字を解読するかのごとく、根気のいる仕事です。

さらに文法を体系化するために、理論物理学者のスティーヴン・ウルフラムと息子のクリストファーを招いて実際に解析を依頼するという徹底ぶり。そして、その現実世界でおこなわれた解析方法は映画のなかで使われています。

私、「ヘプタポッドの文字いいなあ、便利だなあ」と思いまして、実は本コラムを書く少し前に、この文字で感想文を書いたんですよ。

 

「なんとなく分かる」「時間を返して欲しい」など、いろんなご意見ご感想を賜りまして、この原稿もデカい画像1枚でドンと載っていたらある意味新しいなと画期的なことを思いついたのですが、それで納品した場合、編集部から激しく罵られるという未来が見えてしまったので、我に返った現在、日本語で清書している次第です。

街角のクリエイティブ ロゴ


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