あの日見たメスゴリラの名前を僕達はまだ知らない
そこまで馬鹿にならずとも、涎を垂らしながら鑑賞せずとも、単純に色眼鏡をかけずに観ればあら不思議、「ゴースト・イン・ザ・シェル」は古き良きSF映画を丁寧にトレースし、原作を小気味よくブリコラージュし、わかりやすくはあるけれども、身体とは、記憶とは、という普遍的ゆえに困難なテーマを問いかけつつも、アクションシーンもバッチリ搭載した娯楽作品に仕上げられている佳作なのである。
つまらなかったと言うのは簡単でつまらない。しかし、つまらないことに突っ込んでみると、意外と楽しくなってきたりする。そして、「なぜつまらないか」という理由を探すとこれはもう、抜群に楽しい。快感すら感じる。
「ゴースト・イン・ザ・シェル」は、そんな映画の楽しみ方を思い出させてくれた。
ところで、サブタイトルの「あの日見たメスゴリラの名前を僕達はまだ知らない」の件に関してまったく触れていないが、これは「そうしろ」と私のゴーストが囁いたのであって、ゴーストの存在を信じる私はそのまま放流することにする。
来るべき、あらゆるネットが眼根を巡らせ、光や電子となった意思をある一方向に向かわせたとしても、“孤人”が複合体としての“個”になる程には情報化されていない時代に、広大なネットの海のなかで、このコラムを見つけた誰かが混乱することを願って。
