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「ゴースト・イン・ザ・シェル」あの日見たメスゴリラの名前を僕達はまだ知らない

加藤広大 加藤広大


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出典:「ゴースト・イン・ザ・シェル」オフィシャルfacebook

公開からかなり時間も経ち、すっかり出遅れてしまった感がある。

なぜ、ほぼ公開日に観たのにこんなにも書くのが遅くなってしまったのかと訊かれれば、GW前は他の業務に忙殺され、GW中はそのストレスで酒浸りになり、GW明けには反動で高熱を出し寝込んでいたからである。

つまり飲み屋とか、布団とか、硬さは違えどいろんな殻にこもっていたのだが、やっと抜け出して机の前、なんだか硬そうな金属で出来た殻に入っているコンピューターを使ってこれを書いている。

https://www.machikado-creative.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/05/koukaku.png殻のイメージ

それにしても賛否両論である。賛否賛否賛否・・・ここ最近の世の中は、「俺賛!」「私否!」と立場を表明し、各陣営に別れ殴り合い、白黒付けないと気の済まない人が多いらしい。お前は哀川翔か、ゼブラーマンかと突っ込みたくなる。

本作でもすでに賛否出揃ってしまった感がいなめない。となると、私に書くことはもう何もない。しかし書かねば信用が無くなり、信用が無くなった場合仕事がなくなり、最終的には食えなくなり死ぬ。
 

仕方がない。賛否のどちらかに別れなければ両陣営から叩かれかねないこの時代だが、私の本作に対する立場は中間である。ので、賛否の間にある空白地帯から話を進めていこうと思う。

とりあえず、取っ掛かり&おさらいとして、予告編どころか本編5分間バージョンが公式から発表されているので、ご覧ください。

Reference:YouTube

ブリコラージュされた「攻殻機動隊」

映像を観た、または映画を観た方ならハッキリとわかると思うが、完全に攻殻機動隊オマージュである。オマージュというよりは、「アニメ版の攻殻機動隊を実写映像にしてみました」と表現した方が座りが良いだろう。

もっと言えば、本作はアニメ版をそのまま実写映像化したのではなく、ルパート・サンダースの手によりブリコラージュされている。おそらくこれが本作を賛否両論、どちらかといえば陰性感情を多く引き起こしてしまった原因であろう。
 

「ブリコラージュ」は「寄せ集めて自分で作る」、「ものを自分で修繕する」ことで、「器用仕事」とも訳される。

ルパート・サンダースは自身が観たい/演出してみたいシーンを「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」や「イノセンス」からピックアップし、映画の骨格としている。

義体作成シーンはもちろん、顔や物を使ったデカイ映像広告、ゲイシャロボットや、ビルからダイブする少佐、水上での戦闘といったシーンなどがそれだ。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/M/MV5BMWFiYTg2NjEtMzdmNC00YTYyLWFhODUtM2I5NGYzZGRmMzA3L2ltYWdlL2ltYWdlXkEyXkFqcGdeQXVyNjMxMzM3NDI@._V1_SX1777_CR0,0,1777,999_AL_.jpg水上戦闘シーン/出典:IMDb

結果、原作原理主義者は否と言いがちであるし、ライト級のファンや原作未見な方はベスト盤のように楽しめてしまうという断絶が生じ、良くも悪くも彼のブリコラージュが存分に発揮された(あるいはされてしまった)作品となった。
 

もちろん「ブレードランナー」や「2001年宇宙の旅」、タルコフスキーの「惑星ソラリス」、ニコラス・ローグの「赤い影」などの影響も垣間見られる。だが、そもそも攻殻機動隊の設定自体が、かなりの強度があり複雑であるゆえ、それだけで完結できてしまうのでどうしてもそのまま「実写化しました」感が強く印象に残る。

https://scontent.xx.fbcdn.net/v/t31.0-8/17504496_260047377738941_267833708934201391_o.jpg?oh=c5b0a7bcfefade80efd34b1da34b9f8f&oe=59B0A55E並列化済みの北野武/出典:Facebook

これは「北野武、なんでもアウトレイジ問題」にも通じる。本作での北野武は自身をブリコラージュした結果、やっぱり北野武になってしまっている。しかしこれは並列化された北野武であると考えれば、攻殻機動隊的にはまったく問題がないどころか作品の強度が増す。唯一問題があるとすれば「別に北野武じゃなくてもよかったかな」と思いついてしまうことだ。

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