小さなアパートに慎ましく住まう夫婦の元に、出征した一人息子・ハンスの訃報が届く。街ではフランス軍に勝利したことを喜び、父オットー・クヴァンゲルが勤める工場では銃器の増産が命じられていた。
今の体制では増産は不可能だと反対するオットーの態度に同僚は、戦時下では私財を総統のために捧げるべきだと
「息子を捧げたんだ。これ以上の募金があるか?」
夜、オットーは心を決め、妻は彼の手を取った。
「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」
ポストカードの裏に総統、戦争への怒りのメッセージを書き、彼らはベルリンの街のあらゆる場所にカードを置き去っていた。
挨拶が「Guten Tag(こんにちは)」ではなく「Heil Hitler(総統万歳)」の時代、夫婦はその抗議活動を285回も繰り返した。活動の序盤からゲシュタポの捜査が始まったものの、捕まることなく、街への密かな投稿は2年半にも及んだ。
出典:Herald Sun