中毒性に注意! 独特の文体がクセになる
作者の森見登美彦の文体は独特だ。古風なのにポップなのだ。それってどういうこと? という人のために森見登美彦の文体を説明すると、近代文学作家の格調高さと、きゃりーぱみゅぱみゅのヘンテコな可愛さが同居した、なんとも言い難い不思議な文体なのだ。文体を説明するのにアーティストを例に出すのはおかしなことだが、その通りなんだから仕方がない。
森見登美彦の文章は一見、というか一読すると「格式張った小難しそうな言い回しだなあ」という印象を持ってしまうかもしれない。しかし、小難しいという印象は最初だけで、実際はそうでもない。また、作中に「ぽてぽて歩いていると」「ふくふくと笑って」というようなオノマトペや感情表現、「オモチロイ!」「むつかしい」というような古めかしい表現など、とても可愛らしい表現が出てくる。
これをわたしは勝手に“森見節”と呼んでいるのだが、小難しそうな文章の中に可愛らしい表現が出ることで、ポップ・ミュージックのような心地よいリズム感が生まれ、活字を追う快感のようなものが生まれる。