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映画「アシュラ」。食べる映画で闇に落ちる快感。

こいぬまちはる こいぬまちはる


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そして、斎場でのあのシーンです。ドギョンが、初めて市長にたてつく緊迫の場面。
「このスープが飲みたくて斎場をまわるくらいだ」と軽口を叩きながら喪服のまま美味そうにスープをすする市長。自分が手にかけた人間の葬式でもいつもの調子を続ける市長の前で、おもむろに呑んでいた酒のグラスを、歯で直にガリゴリと嚙み砕き出すドギョン。もちろん口の中は血まみれのドロドロ。市長の顔が初めて真顔に。犬が主人に反旗をひるがえして反撃へ、と怒涛のクライマックスへとなだれ込むこれが狼煙のろしとなるのです。


出典:「アシュラ」公式Twitter

バックボーンの説明としても、伏線としても、前フリとしても、感情の機微な変化を見る上でも、感情移入しやすくいやらしくない流れが「食べる」行為で表されていました。美味しいとは程遠い、強烈な「食べる」映画。「新しい自分に変われるのでは?」「一歩踏み出せるかもしれない」と、グラスをガリゴリとかじり食いたい衝動を今も必死に抑えています。

観ている最中も観終わった後も、あの闇から抜け出せない苦しみの中です。でもそれを「快感」と認識している自分がいるのも確か。この作品の一番の怖さはそこなのかも知れません。

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