そして市長のソンベが、ホテルのオードブルを無造作に皿に乗せていく場面。側近に怒りをぶちまけながら、綺麗に盛られた高級そうな食事を乱暴に手づかみで取っていきます。その食べ物の扱い方から、金と権力を欲しいままにし、さらに多くのものを手に入れるためにはどんなこともいとわないであろう下品さと
市長を逮捕しようと捜査に燃える検事のチャイン。彼が率いる特別捜査班が内密に雑居ビルに設置した捜査拠点では、なんと焼肉をやっていました! 弱みを握り、市長を裏切って協力するよう脅した主人公ドギョンを交えての食事。焼肉を挟んで皆で座り、肉が煙をあげてジュウジュウ焼ける中、口撃し合っていました。
あと、その拠点で若い捜査官が出前を取っちゃってボスのチャインにめっちゃ怒られてたりもしました。内密の捜査拠点だっつーのになに出前運ばせてんの! って観客全員が心の中でツッコミましたよね。そんな抜けている部分もしっかりあったりして、それもまたクライマックスとの緩急が効く大きな働きをしていました。
さらには、重い病で入院中であるドギョンの妻を見舞いに来た市長が、ドギョンがむいて差し出したミカンを一粒つまみ、自分では食べずにそのままドギョンに食わせます。厳密に言うと一粒つまんで目の前で見せ、それにドギョンが顔を持って行き口に含む。犬のように。寝ている妻以外には他に誰もいない密室なのに、主従関係が最も露わになる場面です。誰に見せるわけでもなく、主と従がその立場を許容しているのを確認し合うように。またその場面で、市長とドギョンの妻が異母兄妹であること、差し入れの中の札束など、ドギョンが市長の犬たるゆえんが理解できるようになっています。