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渋谷VR施設『VR PARK TOKYO』に行って生きる意味について考えてきた

岡田麻沙 岡田麻沙


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さあ、大丈夫です、もう少し前に出てみましょう。

 

気をつけて! 後ろから敵が近づいてきています。

 

落ち着いて、狙いを定めて撃ってみましょう。

 
お兄さんの声はすごかった。こちらの状況を冷静に分析し、確実な次の一手に導いてくれる。まるで神様である。わたしは神の存在を感じた。ちなみにサルトルは無神論者である。

千々に乱れる思考の中で「現存在の無意味さを自覚せよ」という実存主義者たちの声が遠ざかってゆく。わたしはお兄さんの声に従い、銃を撃ちまくった。バキュン。遠くの敵が倒れる。バキュンバキュン。敵は、次々と墜落してゆく。お兄さん、いや、神の声がわたしに告げる。
 

そう、その調子です!

 
楽しい。なんだこれは、めちゃくちゃ楽しいじゃあないか。そうか、わたしはあのメタリックな敵を倒すために生まれてきたのか。わたしはあの敵を倒すナイフだったのだ。わたしはペーパーナイフだったのだ。本質は実存に先立つのだ。楽しい。このまま一生あれを撃ち続けていたい。身を包む鉄骨のノイズと、ダイナミックに揺らぐ鮮やかな視界に溺れ、わたしは没入を深めていった。

だがアトラクションはふいに終わりを告げる。敵が全滅したためである。満面の笑みで虚空を撃ち続けているわたしに、神様はこう言った。

さあ、最後のステージです。味方が迎えに来ています! ヘリに掴まって脱出しましょう!

 

えっ、脱出・・・?

 
わたしはうろえた。何を言っていっているのかなこの男は、と思った。お兄さんはなおも言い募る。
 

さあ、一歩を踏み出してください。

 

え・・・。

 

大丈夫です、前に進んでみましょう!

 

・・・

 

さあ! 前へ!

 
ためらうわたし。前へ前へと呼びかけ続けるお兄さん。急速に熱が失われて行くのが分かった。神は死んだ、と思った。わたしは、指示されるままにはしごを渡り、唐突に出現した味方に救われて、真顔でゲームを終了した。

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