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『コンビニ人間』解説

門松一里 門松一里


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コンビニ人間

〈コンビニ人間〉として再生した古倉恵子ですが、実はコンビニのアルバイトとしては、さほど優秀ではありません。本人も自覚していますが、言われたことを忠実にする完全なマニュアル人間です。他のマニュアル人間と同じように、表裏がないかわりに、ジョークも通じません。再生する前まで「自分」がなかったので、欲望というものを理解していません。けれど、他者と異なっているという違和感を自覚しています。

大学を卒業しているので一般的な教養はあり、法律を遵守しています。ただ、そこに罪の概念――考え方はありません。罪については、別の機会にしましょう。

古倉恵子は、社会に適応しようと努力しています。ただ、それがコンビニエンスストアというだけにすぎません。

では、古倉恵子がコンビニに出会わなかったとしたら?

大学に入ったばかりの頃、学校の行事で能を観に行き、友達がいなかった私は一人で帰るうちに道を間違えたらしく、いつの間にか見覚えのないオフィス街に迷い込んだのだった。
 ふと気が付くと、人の気配がどこにもなかった。白くて綺麗なビルだらけの街は、画用紙で作った模型のような偽物じみた光景だった。
 まるでゴーストタウンのような、ビルだけの世界。日曜の昼間、街には私以外誰の気配もなかった。
(引用:『コンビニ人間』村田沙耶香(2016年)P14)

この話に、季節の移ろいやコンビニの中から見た外の風景は出てきません。異質な人間が、その境界線上にある場所に佇んでいます。それはまるで、シュールレアリスムのジョルジョ・デ・キリコの絵画のようです。

日本の芸能である能は、人間が操人形のように演技します。見えない糸に動かされる能楽師の顔には、能面があります。

誰であれ古倉恵子の仮面を剥がそうとしますが、古倉恵子には本当の顔――本質がありません。そして、再生した古倉恵子はその仮面こそが素顔だと気づきます。

「いらっしゃいませ!」

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