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朝井まかての時代小説5選

街クリ編集部 街クリ編集部


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5. 『恋歌』
(2013年)講談社

2013年の本屋が選ぶ時代小説大賞、第150回(2014年)直木三十五賞受賞作です。樋口一葉の和歌の師匠であった中島歌子は、幕末に一途な恋の末、水戸藩士・林忠左衛門以徳に嫁ぎました。元はその名を登世と言い、江戸の水戸藩御定宿の娘でしたが、夫・以徳は尊王攘夷で知られる同藩の天狗党に属し、列強への開国以来の混乱が続く中で相対する諸生党との内戦に巻き込まれていました。聡明な以徳は、藩内がいくつのも派閥に分かれて主権を争っていることも、列強への攘夷を叫ぶことも虚しいことであることは分かっていましたが、時代の勢いに逆らうことはできずに、その生きようによって自らの義を全うせざるを得なかったのです。

天狗党志士の妻である登世も投獄され、多くの無罪の妻子が無慈悲に処刑されるところを見て、自身はすんでのところで解き放たれます。愛する夫の生死も分からないまま、登世は歌人になるべく修行を積み、歌塾を主宰し成功します。本作は、いつもは子供のように無邪気な歌子しか知らない弟子が、歌子の手記と遺言を見つけ、その壮絶な半生を知り、「歌はもう命懸けで詠むものではないのだろうか」と嘆いた歌子の心の内を知ることになります。そして、最後に歌子がつけた天狗党の妻らしい決着とは。時代に翻弄された人々と一途な思いが、幾多の伏線によって最後に明らかになる重厚な作品です。

まとめ

著者は直木賞受賞後も旺盛な執筆活動を続けており、特に今年だけでも4つの作品が刊行されています。ここに紹介した5作品を見るだけで、朝井まかての上手さと多彩さを理解していただけると思います。是非、他の作品にも触れてみてください。

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