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朝井まかての時代小説5選

街クリ編集部 街クリ編集部


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4. 『先生のお庭番』
(2012年)徳間書店

長崎出島でオランダ商館の医師・シーボルトの薬草園で、園丁として仕えた熊吉が見た「しぼると先生」は、いったい何者だったのでしょうか。15歳で兄弟子に押し付けられるように出島に仕えた熊吉は、裸地から薬草園を作るよう命じられ最初は戸惑うものの、先生が感動するような薬草園を作り上げます。先生の信頼を得、さらに先生のために仕えたいと考えた熊吉は、南国に茶の種を土団子にくるんで送る方法や、日本の草木を生きたままオランダまで運ぶための箱を提案し、作り上げます。

門下生等に自分の知識を惜しみなく教え、日本人の創意工夫や仕事に対する気概に大いに感心する先生は、日本の自然は他国にはないかけがえのない美しいものだと熊吉に語ります。しかし、物語の後半で先生が国外持ち出し禁制の地図を運び出そうとした事件から、先生の今まで見えなかった、秋の虫をただうるさいものとし殺そうする、自然をねじ伏せようとする姿勢に違和感を覚えます。

先生が熊吉や先生の奥方についていた嘘も露見しますが、熊吉はそれでも最後まで先生と過ごした4年間をかけがえなく感じています。主人公・熊吉の職人らしい一途さが潔くも哀しい読後感の作品です。

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