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歴代「芥川賞」受賞作おすすめ10選

街クリ編集部 街クリ編集部


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5.  『この人の閾』
保坂和志(1995年)新潮社

1995年度上半期に第113回芥川賞を受賞した作品。鎌倉・稲村ケ崎に過ごす父子家庭を描き谷崎潤一郎賞を受賞した『季節の記憶』(1996年、講談社、現在絶版)や、「「ビックリガードの五叉路」と呼ばれているところで、私は一週間前に死んだ篠島が歩いていた」という奇妙な文法の冒頭で話題を集め野間文芸賞も受賞した『未明の闘争』(2013年、講談社)など、淡々とした日常で世界と触れ合いながら思考を研ぎ澄ます作風で根強いファンを集める保坂和志の出世作ともいえます。

受賞時の選評では選考委員の日野啓三に「バブルの崩壊、阪神大震災とオウム・サリン事件のあとに、われわれが気がついたのはとくに意味もないこの一日の静かな光ではないだろうか」「その意味で、この小説は新しい文学のひとつの(唯一のではない)可能性をそっと差し出したものと思う」と激賞されました。小田原まで来て仕事の予定をすっぽかされた主人公が、大学時代の先輩が小田原に住んでいたことを偶然思い出し、その人の家に行き、ただ会話をするお話です。小説において男女が会えば、情事に及ぶのが当然、といった文学の定型的な思考を打ち破る、自由な作品です。いかに世間に通用したルールが間違っているか、どうすれば自由に生きられるのか、淡淡とした日常で考えを深めていく作風はかなり中毒的。働きたくない人、なんだか理由はわからないが疲れてしまった、そんな人に猛烈にオススメしたい偉大な作家の作品です。

 

6. 『蛇を踏む』
川上弘美(1999年)文藝春秋

1996年度上半期に第115回芥川賞を受賞した作品。川上弘美の特徴として、現実の中にあっさりと非現実的なものが食い込んでくる点があげられます。

この作品も、ある日、主人公が公園で偶然蛇を踏んづけてしまうと、「踏まれたので仕方ありません」と言葉を発し、この蛇が中年女性に変身して主人公の家に住み込みます。この蛇は主人公が家に帰るとおいしい料理を用意して主人公を待ち受けています。実の母とは似ても似つかないのに「わたしはあなたの母」だと言って主人公の母を自称する蛇は、やがて主人公を「蛇の世界」へ誘い始めます・・・正直、よくわかりませんよね。説明しようとすればするほど、言葉が浮遊してしまい、つかみどころがなくなるのが川上弘美の作品の恐ろしくも、素晴らしいところです。読み、感じてみてください。

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