林氏が生み出す、まるで戦場にカメラを持ち込んで撮影したかのような迫力のある殺陣が好評を得て、林氏はNHK大河ドラマを始め数多くの時代劇に携わりますが、2015年10月に惜しまれつつ逝去されました。そして、長きにわたりNHK大河ドラマの殺陣師だった林氏の意思を受け継ぎ「真田丸」で殺陣師を務めるのは、林氏の弟子であり「邦史朗」の名を引き継いだ中川邦史朗氏です。
出典:若駒プロ
なんと中川氏、この「真田丸」が殺陣師としてのデビュー作! 林氏が手ずから鍛えた中川氏の殺陣ということで、リアリティのある立ち回りは健在です!
また、若駒プロに所属する俳優さんも、主に殺陣シーンで大活躍しています。若駒に所属する俳優さんは時代劇をメインに長いキャリアを積まれた方が多く、着付けの難しい鎧や小手などの衣装もすべて自分で着ることが出来るのだとか。一見当たり前のように感じますが、立ち回りに参加する人員すべてに着付けの人間を宛がっていたら大変な労力と時間がかかりますよね。故・林邦史朗氏のプロとしてのこだわりがこんなところにも息づいています。
“関西系”と“関東系”が存在する!?
残念ながら、うどんのだしの味の話ではありません。テレビ放映される時代劇の殺陣スタイルには、なんと“関西系”と“関東系”とも言える違いが存在します。これは、時代劇を撮影するスタジオの影響があるというのが主な理由の1つです。
関西系の殺陣は、前章でも述べたような「舞のような殺陣」が主流で、次から次へと一太刀で敵を倒していく華やかさ・流麗さなどが特徴です。また一定の緩急のある立ち回りで、リズム感がありますね。「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」などが代表的です。
Reference:YouTube
一方関東系の殺陣は、「リアリティのある殺陣」が主流で、例えば敵が振りかぶってきたところをギリギリで避けてから切るとか、敵に一太刀浴びせた後さらにダメ押しで刀を押し込むなどのハラハラ感・リアル感が特徴です。
こちらの動画は林氏主催の殺陣ライブの映像なのですが、1:40あたりからのもつれあいながら切りかかって最終的に馬乗りになったりする場面などは、関西系には見られない泥臭さがありますね!
Reference:YouTube
全体の構成としても、関西系はある一定の型に嵌った安心感のあるストーリー展開が魅力ですが、関東系はカメラワークやCGなど新しいものを積極的に取り入れて現代の時代劇を作っていこうという意気込みが感じられます。その他、チャンバラ的要素のあるものや、ワイヤーアクションなどのド派手な演出のものなど殺陣にも様々な種類があり、「殺陣」と一言に言っても実に奥深いです。