いつも削りたての鉛筆みたい!?
そもそもシャープペンシルとは、削らなくていい鉛筆という利点を持っていた。しかし前者のような筆線の濃いシャープペンシルは、芯の残りが短くなると丸くなった面ばかりが紙に向いてしまう。本体に芯の向きをコントロールする部品を内蔵したクルトガは、芯が短くなっても書き味が全く変わらないという強烈な強みを持っていた。
(出典:三菱鉛筆株式会社)
次第にアルファゲルは、その地位をクルトガに追われるようになる。やわらかい書き味が好まれなくなった瞬間だった。ではなぜドクターグリップは生き残ったのだろうか。
ドクターグリップは、2003年に「Gスペック」と言う新ラインナップを出した。シャープペンシルにしてはかなり重みがあるボディだが、そのバランスの良さが圧倒的で、重さの割に疲れが来ない。加えて柔らかいグリップと、それまで通りの堅めグリップと両方を販売したため、顧客のニーズをうまく捕らえられたのではなかろうか。
またアルファゲルには、柔らかすぎてグリップがちぎれる、という問題も発生していた。ドクターグリップやクルトガの方が長持ちするため、自然と手に取られるようになったのだろう。
「大人の鉛筆」ブーム
時代はドクターグリップとクルトガの2強で迎えた。長らく両横綱が天下を収めていたシャープペン業界が次に迎えた革命は、鉛筆風シャープペンシルの登場だった。キャンパスノートでお馴染みのコクヨが小学生向けと銘打ちって、芯が太くて本体の構造がシンプルなシャープペンシルを発売した。
小学生は、その部品が多いからという理由でシャープペンシルを禁止されることが多い。しかしこの商品は従来のシャープペンシルと比べて恐ろしく単純で部品が少ない。分解して遊ぶ余地がない。また芯の太さは1.3mmと0.9mm。鉛筆のような太さを持ちながら削らなくて良い。しかしその構造が図らずも大人にウケることとなる。
それまでも、芯の太いシャープペンシルは存在した。特に海外文房具や、国内製品でも作図用などプロ向けのラインナップでは2.0mmまで揃っている。しかしコクヨがすごいのは、そうした文房具比べて圧倒的に安価であるということ。
また時を同じくして、下町ブームや手工業ブームと相まって、葛飾区に営業工場を構える北星鉛筆株式会社の「大人の鉛筆」が注目されるようになった。こうして大人たちの間で、まるで鉛筆のような書き味のシャープペンシルが流行する。