ドーン・オブ・ザ・デッドを血みどろに彩る音楽たち
さて、この映画で最初に流れる歌モノの曲としては、まずウェールズ産のロック・バンド「ステレオフォニックス」が歌う『Have A Nice Day』がアナの運転する車のラジオから漏れ聞こえます。映画が始まった瞬間から、思いっきり不穏な空気が流れながらも、まったく気付かない呑気なアナを観ながら「何がいい1日をだよ!」と突っ込まずにはいられませんが、映画の前途多難を示唆する、皮肉がたっぷり込められた1曲となっております。
Reference:YouTube
そして、次に流れる歌モノの曲。これが本作のテーマソングと言えるかもしれません。翌日、ゾンビまみれになった世界に突如放り出されたアナが目撃した絶望的な光景、理由も分からず車で逃走し、不運にも木に追突して軽く意識が飛んだ後、タイトルバックが現れ、そこに流れるのが「ジョニー・キャッシュ」の名曲、『The man comes around』です。
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映画ではイントロ前部分がカットされていますが、この曲は冒頭と最後にジョニー・キャッシュによる「ヨハネの黙示録の四騎士」をモチーフにした語りが収録されています。
まず冒頭で語られるのは、第一の封印が解かれた時に現れる白い馬に乗った騎士、そして曲の最後では、第四の封印が解かれた時に現れる騎士のことが語られます。この青白い馬に乗った騎士は疫病や野獣を用いて、人間を死に至らしめる役目を担っているとされるのですが、この疫病はまさしく本作でのゾンビ、そして感染のことでしょう。全編を通したテーマソングと言っても良い象徴的な選曲です。
『黙示録の騎士』ヴィクトル・ヴァスネツォフ(出典:Wikipedia)
そして、この映画でもう1曲、強烈に印象が残る曲と言えば、エンディングで突如流れ始める「ジムキャロルバンド」の『People Who Died』でしょう。