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(後編)ゲルインキボールペン「ハイテックC」はなぜ廃れたのか

原田真帆 原田真帆


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パイロットの強み、それは「書き味」

ハイテックが生んだ「カスタマイズボールペン」という発想は革命的だった。それがはやる一方、単色ボールペンは忘れ去られていった。一時は40色を誇ったハイテックC単色ペンのカラーバリエーションも現在は20色、店頭では黒赤青の3色しか見られないことも少なくない。さらに「カスタマイズボールペン」は後発商品の方がよりその利点を生かせていたのであろう。カスタマイズ市場でも影を薄めたハイテックはいわば、自らのアイデアが仇となった。

スタイルフィットはその後、カスタマイズシリーズに単色ボディを投入する。ハイテックが廃れさせたはずの単色市場になぜ今さら、と思ったのをよく覚えている。しかし悔しいことにこちらは成功したのだ。その強みはどこだろう? 女子力を感じさせるボディの柄か、はたまたノック式だからか、あるいはこれまでにない細さだからか。ハイテックは再起を懸けたか懸けないか、ノック式単色ハイテックも発売したが、根付いた印象はない。

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左から、単色ハイテックC、スリッチーズ、ハイテックCコレト

失礼を承知で言うと、パイロットの商品は時にデザインがどこか「ダサい」。今の「ドクターグリップ」こそかっこ良いものの、旧式はメカチックであるし、そもそもあの太さを「非スタイリッシュ」と位置付ける人もいるだろう。単色ハイテックはカッコいいのに、コレトよりもスリッチーズのボディの方がスマートなのは否定できない。

ここまで悪く言いながら、わたしがパイロットを、ハイテックを好きな理由は、書き心地以外の何ものでもない。「カスタマイズ後発三銃士」を出すのは、絵の具のぺんてる、油性マーカーのゼブラ、鉛筆の三菱。ではパイロットはもともと何の会社だったかと言えば「万年筆」だ。ライバルはセーラー万年筆。船乗りであった創業者が、波に揺れる船の上で航海日誌をつけやすいようにと、インク瓶を必要としない上に書きやすいペン「万年筆」を作ったのが始まりだ。ペンの書き味は「お墨付き」なのである。

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