面影ラッキーホール『あんなに反対してたお義父さんにビールをつがれて』
全曲タイアップ狙い、ワーグナーの総合芸術論を理論的背景として活動を行う、あのPerfumeですら前座扱いの伝説のバンド、面影ラッキーホール(現Only Love Hurts)。彼らがインディーズ時代にリリースしたアルバム、『メロ』で世に放った名曲、『あんなに反対してたお義父さんにビールをつがれて』は、後世に残すべき素晴らしき歌謡曲であると共に、明るい未来を夢見るカップルに現実を突き付けるために聴かせてやりたい曲の筆頭でもあります。
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俺足りない頭で考えた できることといやあ駆け落ちだ
パクったカローラ2のエンジン ついついふかしちまったんだ
見知らぬ街でたった2人の同棲ごっこがはじまって
俺設備屋に就職し みちこスーパーでパートしはじめた
面影ラッキーホール『あんなに反対してたお義父さんにビールをつがれて』
確かな演奏と説得力のある、まるで1本の短編小説のような歌詞は、きっと「クリスマスにこんなことをしてる場合じゃない!」と浮かれ気分なカップルの目を覚まさせてくれるはずです。
三上寛『あなたもスターになれる』
青森県北津軽郡小泊村出身、人間の感情をすべて一緒くたにして撹拌し、ちょっぴりの混沌を加えて用水路にぶちまけたような「怨歌」を歌い続けるフォークシンガー、三上寛の『あなたもスターになれる』は、上京してこのかた、すっかり東京に染まってしまってハイカラ気分、まるで映画の登場人物のように振る舞う幸せと下心一杯のカップルに「お前ら所詮田舎モノだろう!」と喝を入れてくれる素晴らしい楽曲です。
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月賦で買ったテレビに誘われ
幸せだからと手をたたき
悪の季節と恋の季節をすりかえられて
また会う日まで 空に太陽のある限り
三上寛『あなたもスターになれる』
寺山修司がかつて「故郷の訛りなくせし友と居てモカ珈琲はかくまで苦し」と詠ったように、都会に出て月日が経っても、故郷のことを忘れたり、都会者ぶって卑下しちゃいけないよという思いを込めて、カップルだけでなく、全地方出身者は1ヶ月に1度、この曲を聴くべきです。
ジョン・ケージ『Organ2/ASLSP』
米国の音楽家、詩人、キノコ研究家、そして思想家でもあるジョン・ケージ大先生がドロップした、総演奏時間639年の超大作、『Organ2/ASLSP』も外せない一曲です。この曲は、ドイツのハルバーシュタットにある聖ブキャルディ教会で今も演奏され続け、演奏終了の予定は2640年9月5日となっており、そのコンセプトの壮大さから相対的に「こいつ(この人)と付き合ってる場合じゃない」と相手が妙に小物に見えてしまう必殺の1曲となっています。
肝心の音ですが、現地では以下の動画のような状態で演奏され続けているようです。
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ちなみにこの楽曲、残念ながら我々は終わりを聴くことは叶いませんが、お手軽なピアノ版もありますので、気になる方はぜひチェックしてください。それでも20分から70分くらいはありますが……
余談ですが、長期間演奏される楽曲と言えば、『Organ2/ASLSP』の他にも『LongPlayer』という曲があります。こちらの演奏時間はなんと1,000年。2000年の1月1日に演奏は始まっており、2999年12月31日まで演奏される予定です。
セルジュ・ゲンズブール『69, année érotique』
せっかくなので、愛についての曲もご紹介しておきましょう。ブリジット・バルドーと不倫して、ジェーン・バーキンを内縁の妻にした稀代のプレイボーイ、セルジュ・ゲンズブールが歌う『69, année érotique』は、邦題を「69はエロな年」と言います。
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数々の綺麗どころを的にかけ、ゲットし続けた性の骨伝導師、セルジュ・ゲンズブールの声を聴いたが最後、女性の心は完全に盗まれてしまいます。この曲でなくとも、セルジュ・ゲンズブールの曲であれば、大体は間違いありません。その狂った邦題も
・くたばれキャベツ野郎(原題:L’Homme à tête de chou)
・唇によだれ(原題:L’Eau à la bouche)
・海、セックスそして太陽(原題:Sea, Sex and Sun)
などなど、盛り沢山な品揃えでクリスマスのカップルを迎え撃ちます。好みに合わせてご使用ください。
ジョン・レノン&ヨーコ・オノ『Kiss Kiss Kiss』
クリスマスといえば、ジョン・レノンの『Happy Xmas』がそこかしこで流れますが、ロマンチックな気分に浸り、清純派を気取っているカップルも、夜になりゃあやることは皆同じ。ということで、夜の情事に先立ち、ぜひともこの曲、よりによってジョン・レノンの遺作となってしまった『ダブル・ファンタジー』のA面2曲目、『Kiss Kiss Kiss』を大音量で聴くことをお勧めいたします。
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軽快なニューウェイブを感じさせるイントロがはじまり、左右から迫り聴こえてくるオノ・ヨーコの
「抱いてぇ……」
「DA☆I☆TE☆」
という切ない声と、後半からの壮絶なオノ・ヨーコの喘ぎ声を聴いたが最後、カップルは「愛というものは一体何なのか」を考えた挙句、考えすぎてその場で卒倒、最悪の場合は爆散してしまうかも知れません。
少々真面目になりますと、賛否両論あるアルバムですが、個人的にはオノ・ヨーコの楽曲も含め、むしろ、彼女の楽曲が入っているからこその『ダブル・ファンタジー』であると感じます。特にこの『Kiss Kiss Kiss』は、イロモノ故に嫌厭されがちですが、トーキング・ヘッズなどを彷彿とさせるニュー・ウェイブ、ポスト・パンク的な味付けはさすがの一言です。
ちなみに、この手の喘ぎ声系では、全曲喘ぎまくる池玲子のアルバム『恍惚の世界』などがありますが、誰かに聴かせる場合、ジョン・レノン&ヨーコ・オノとアーティスト名に記載されていた方が、ネームバリューと安心感から、うっかり聴いてしまったカップルは気まずい雰囲気になる。というのがミソです。
さて、今回紹介させていただきました名曲たち、いずれも私が自信を持ってオススメできる、何度も聴いた(ジョン・ケージ以外)素晴らしい楽曲ばかりですが、知人や同僚が「クリスマスは彼氏(彼女)と過ごすんだあ(はあと)」と公言していたら、「クリスマスのプレイリストを作ったから、恋人と一緒に聴きなよグッドムードになるよ」とプレゼントするのも良いでしょう。もちろん、それにより人間関係に溝が生まれるにしろ、訴訟沙汰になるにしろ、昨今流行りの自己責任でお願い申し上げます。
ちなみに先日、絶対に聴くべき「クリスマス・ソング」の名曲・名盤特集という記事が公開されていますので、“クリスマスらしい”曲紹介をご所クリスマスも間近。WEB上でも「クリスマスに聞きたい曲~選」のような安易な記事が溢れている。どこのメディアも足並み揃えて同じような記事を配信する、毎年繰り返すこのお寒い寒波に、正直飽き飽きしているのは筆者だけではないはず。世の中にはもっと別の種類のまとめ記事があってもいいはずだ。
ということで、今回はそんなあなたに「逆ベクトルなクリスマスメドレー」を贈ろう。題して「【クリスマスに聞きたくない曲6選」。
1. ミドリカワ書房『君は僕のものだった』
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前々回、「女子に嫌われたい時にカラオケで歌うべき曲5選」の中でも紹介したミドリカワ書房。『片想われ』も最低な歌だったが、この『君は僕のものだった』も負けてはいない。その内容は、恋人に捨てられた男が、ビデオカメラの中の彼女を真っ暗な部屋の中で見て、思い出したり、泣いたり、ズボンを下ろしてオ○ニーをしたりするというもので、たとえるなら『Majiでリベンジポルノする5秒前』みたいな、そんな感じの曲なのである。
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(↑文化度が低い人のための元ネタ)
彼女に捨てられたが未練タラタラで、クリスマスになっても断ち切れない…そんな男子諸君には劇薬のような一曲だろう。しかし、時にはショック療法も大事。この曲を聞いて泣き、早く諦めて新年にかけよう。(※なお、リベンジポルノは絶対にいけません)
2. 加藤ミリヤ『ディアロンリーガール』
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女子の名前が連呼される曲。総勢40名の渋谷の女子の名前が曲中に登場する。どうやら少女たちの不安やさみしさ、孤独を歌った曲らしいが、ちょっと危険な匂いがして頭の中に入ってこない人も多いと思う。
しかし、今はちょうどクリスマスの時期。しばらく聞いて落ち着きを取り戻したなら、恋人のいない男子諸君ならこんな風に思う可能性もある。「マリア、メイ、アイ、カオリ…ミク、アミ、ヒカリ…ああ、40人も女子の名前が出てきたのに、その中の俺ひとりも付き合ったことないな」と。
それだけじゃなく、『「ディアロンリーガール」というよりむしろ「ディアロンリーボーイ」じゃん、ていうか渋谷のギャルなんて俺より絶対モテるだろ、そんな孤独じゃないじゃんああギャルと付き合いたい』とすら思うかもしれない。
歌詞の中に付き合った子の名前がないだけなのか、それともそもそも女性と付き合ったことがないのかは分からないが、万が一ロンリーボーイな気分に浸ってしまう可能性を考えると、クリスマス期には避けるべき一曲なことは間違いない。
3. ベッド・イン『C調び~なす!』
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ライブシーンを中心に、人気急上昇中の地下セクシーアイドルのベッド・イン。バブル時代を彷彿とさせるパフォーマンスと、とにかく容赦のないお下劣な下ネタで、歓声と悲鳴を半々くらいの割合で集めている。そして、ベッド・インのPVは、見ていてとても楽しく、無条件に笑ってしまうクオリティだ。悩みがどうでも良くなるような、そんないい意味でのアホさを持っている。
しかし、クリスマスに非リアが聞くのは危険だ。なぜなら、ふと我に返って「ああ、今自分ベッド・インを聞いて笑ってる…この『性夜』に誰ともベッド・インせずにいるのに」と考えてしまう危険性があるからだ。涙で笑えなくなる前に覚えていてほしい。
4. 山崎あおい『恋の予感』
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なにも暗い曲であったり、身を削るような失恋曲ばかりが辛いわけではない。明るく爽やかな曲も、クリスマスにひとりで聞くと危険なものも多い。現役慶応大生シンガーの山崎あおいの代表曲『恋の予感』は、恋の予感がひとつもなくクリスマスを迎えてしまった非リアが聞くと、なんとも言えない切なさに襲われること請け合いだ。
恋がはじまりそうだ ずっと1人でいたけど
気づいた この想い 教えてあげたいよいつか
今日までの強がった 自分も変えられそうよ
ウソをつくのはやめた 恋の予感
違うよ、恋が始まらなかったから、みんな今ひとりなんだよ
爽やかな歌詞、爽やかなメロディー、爽やかで透明感のある歌声…クリスマスにこの純粋な歌を聞いてしまうと「ごめんなさい、こんなに薄汚れた人間が聞いてごめんなさい」と思ってしまう可能性もゼロではない。注意しよう。
5. 柴田淳『片想い』
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ここにきてやけに普通な選曲、「たしかにこの曲聞いたら辛くなるでしょ、しかもクリスマスなら余計に」と思う読者もいるかと思う。しかし、これには深い訳があるのだ。そう、単純に他にいいネタが思いつかなかっただけである。
でも、実際この曲を聞くと辛い気持ちになるのは間違いない。恋人のいる男性に叶わぬ恋をした経験のある女性なら、クリスマスにこれを聞けばとても辛い気持ちになるだろう。男性の私でもチャラ男に弄ばれたような気持ちになって聞いてしまうのだから間違いない。
6. 渡哲也『ひとり』
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日本を代表する俳優、渡哲也の代表曲のひとつ。『大都会PARTII』の挿入歌として使用されたこの曲は、一周回ってサビの切なさがクリスマス期には身に染みる。今ではマグロ漁船の上で海風に身を冷たくしていた渡さんも、昔はこうやって都会の風に凍えていたようだ。
いっそ泣こうか 笑おうか
胸のすきまに 霧が降る
ひとり ひとり おれもひとり
想像力がだいぶ豊かな人なら、この曲をクリスマスに聞いても寂しくなるのかもしれない。きっと、何十万人にひとりくらいの割合だろうが、該当する人は注意してほしい。
以上、「非リアがクリスマスに聞くと年越しできない曲6選」をお送りした。この記事を読んで、少しでも笑ったり怒ったりしてくれれば幸いである。その場合、あなたはもう泣いてはいないのだから。
最後にひとりぼっちなあなたへ、「逆ベクトル曲」をプレゼントしよう。バックナンバーはこちら。
望の方はぜひそちらもご覧ください。
それでは、1人の人も、2人の人も、家族でお過ごしになる方も、よきクリスマスを!