先日自転車を盗まれました。ライターの加藤です。
ルパン三世の楽曲といえば、いわゆる「ルパン三世のテーマ」が有名ですが、映画版、長編アニメ版の主題歌・挿入歌にも、メインテーマに負けず劣らず素晴らしいものがたくさんあります。10月より新しいテレビシリーズも開始されたということで、今それを観た勢いでこの記事を書き始めてみました。記憶をたどりたどり、長編ルパンを彩る名曲たちをご紹介させていただきます。
ルパン音頭(ルパン三世 ルパンVS複製人間)
記念すべき劇場映画第1作、コブシを効かせるは歌藝を極めし昭和の大歌手、三波春夫。映画の方は全体を通してクローン技術、不老不死、賢者の石、コピーを重ねると劣化するゲノムなど、比較的子どもが観るにはやや難解で、大人向けのハードボイルドなSF作品であるにも関わらず、最後にこの曲をぶち込んでくるセンスに脱帽です。しかも、全く映画に合わないと思いきや、これが非常にぴったりくるんです。エンドロールに入りイントロが流れた瞬間、ああ、この楽しい映画が終わってしまったのだなあという気持ちが音頭のビートと共に盛り上がり、明日からまたいつもの生活を送らなければいけないのか……と思うと不思議と涙が溢れて来てしまいます。
「ルパン音頭」(テイチク・レコード)作詞 – モンキー・パンチ / 補作詞 – 中山大三郎 / 作曲・編曲 – 大野雄二 / 唄 – 三波春夫
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炎のたからもの(ルパン三世カリオストロの城)
国営カジノの大金庫からかっぱらった紙幣を偽札だと見抜き、車からパァーッと札束をばら撒いたところでイントロが「ふぅうー、ううううううー」と流れ、もうこのオープニングだけで「完」と画面に表示され、徐々にフェイドアウトしながらこの映画が終わっても全く問題ありません。ルパンと次元がカリオストロ公国に向かう道中のカットは、まさに男2人旅と言った映像で、何度観ても今度のルパンは一体どんな冒険が待っているんだろうと胸が弾みます。
正直、セリフを暗記するほど観ているのでオチも何もないのですが未だにカリオストロの城のオープニングが始まると、そんなことはおかまいなしに心のどこかで炎が燃え盛るのです。
余談ですが、ルパンシリーズを通して私が一番好きな楽曲は、本作で使われている「サンバ・テンペラード」です。
「炎のたからもの」(コロムビア・レコード)作詞 – 橋本淳 / 作曲・編曲 – 大野雄二 / 唄 – ボビー
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セラヴィと言わないで(ルパン三世風魔一族の陰謀)
大人の事情で声優の総入れ替えが行われ、ルパンファンの記憶からは「念力珍作戦」と同様に若干無かったことにされているこの映画、さらには大野雄二も降板、音響スタッフも軒並み交代したため、主題歌の制作もそれに合わせて全く別のスタッフによって制作されています。しかしながら、当時のアニメ主題歌の勘所を抑えた高い水準での仕上がりとなっているのは、プレッシャーがかかる中、音楽を制作したスタッフの努力の賜物でしょう。映画自体も今見直してみれば、カリオストロのオマージュや、よく考えたら超貴重な坊主頭の銭形が拝めるなど、案外趣のある作りとなっています。
「セラヴィと言わないで」作詞 – 有川正沙子 / 作曲 – 南申午 / 編曲 – 矢野立美 / 唄 – 麻倉未稀
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HE’S GONE(ルパン三世ヘミングウェイペーパーの謎)
地中海に浮かぶコルカカ島に、ヘミングウェイのお宝を探しに来たルパンは、ひょんなことからヒロインのマリアと知り合います。彼女が経営する、島でただひとつの酒場にあるたったひとつのジューク・ボックスから、要所要所でこの曲が流れます。
映画の最後、マリアの店でルパンはジュークボックスを少しだけ振り返り、出口に向かおうとするのですが、そこでマリアが「かけるわ、聴いていきなさいよ」とジュークボックスに近づきます。しかしルパンは「いや、いい。楽しみにしとくよ、今度きた時の」と断ります「今度?」悲しそうな声でマリアが尋ねます「またこの島に向かって風が吹いたら、なぁんてなと」とルパンが答えると「待ってるかも……しれない」と言う非常に高度な大人のやりとりをしたあと、ルパンはタイトル通りHE’S GONEしてしまいます。
自分なら絶対「じゃあせっかくだしお願いします」とか言ってあと2、3杯飲んで4、5泊してくなあと毎回思うのですが、きっと、こういう振る舞いの違いで男はモテるかモテないかが決まるんですね。
「HE’S GONE」作詞 – 三浦徳子、Linda Hennrick / 作曲 – 大野雄二 / 唄 – 木原美智子
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Golden Game(ルパン三世ロシアより愛をこめて)
ラスプーチン、アナスタシア、ロマノフ王朝と、オカルト好きにはたまらない要素が散りばめられた「ロシアより愛をこめて」で流れる、しばたはつみが歌うGolden Gameは、往年の角川映画音楽を感じさせる哀愁溢れるナンバーとなっています。本編の方は本作最大の敵、ラスプートンの部下であるラッキーとビッグマウス・ジョーの凸凹コンビが最高で、特に相棒を失ったラッキーがラスプートンと相対するシーンや次元がラッキーを好敵手として認める過程は、もうベタ過ぎて心が燃え上がると共に、哀しみを背負った男の生き様に胸が苦しくなります。
ラスプートンの前に、無残にも散るラッキーを観た後にこの曲を聴くと、Golden Gameはまさにラッキーのためにあると言っても過言ではないとすら思えます。