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偲ぶ時は降霊リスクにご用心。ウィジャ・ボードの世界

加藤広大 加藤広大


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霊、降ろしてますか? ライターの加藤です。グラフィックデザイナーのかたわら、主に酒の席くらいでしか役に立たないあれこれを紹介しています。今回はオカルトグッズの雄「ウィジャ・ボード」です。

ウィジャ・ボードとは?

ウィジャ・ボードとは、簡単に言ってしまえば、洋モノのこっくりさんのようなものです。

日本で馴染みの深いこっくりさん、エンジェルさんとも言いますね。呼び名は色々ですが、聞き覚えのある方も多いでしょうし、呪われた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

こっくりさんと言えば、紙に「はい、いいえ、鳥居、男、女、0〜9までの数字、50音」を書き、上に10円玉を置き、参加している全員の人差し指を添えて、呼び出しの後、質問をするというスタイルで良く知られています。


こっくりさん(出典:kaidan-banashi.com

今まで順調に動いていた10円玉が突如不穏な動きをはじめ、参加者が体調不良を訴え、キツネに取り憑かれた女の子が全く違う声色で恐ろしいことを言い、後日その女の子が消息不明になるまでが様式美とされています。

一方、ウィジャ・ボードも「Yes,No,Goodbye、(場合によってはMay Beも追加)、0〜9の数字、アルファベット表」を書き、質問に応じて、プランシェットという板が文字を指し示すといった寸法です。


ウィジャ・ボード(出典:independent

今まで質問に答えていた霊が突如不穏な動きをはじめ、ラップ現象が起き、雰囲気を出すために立てていた蝋燭がいきなり消え、悪魔に取り憑かれた女の子が全く違う声色で生贄を求め、後日その女の子がモノホンのヴァンパイアになるか失踪するまでが様式美とされています。

ウィジャ・ボードの起源

ウィジャ・ボードの起源は、一般的に「テーブル・ターニング」という降霊術に端を発しているようですが、最古の起源となると、これは諸説あるようです。ふと思ったのですが、諸説あるなら起源をウィジャ・ボードで聞けば良いのではないでしょうか?


かっこいいテーブル・ターニング(出典:theguardian.com

実は、日本版ウィジャ・ボードであるこっくりさんのルーツもテーブル・ターニングにあります。その歴史は意外にも新しく、1884年に伊豆半島沖に漂着したアメリカの船員が、当時自国で流行していたテーブル・ターニングを地元住民に披露した結果、日本各地に広まっていったそうです。

私はこの事実を知るまで、こっくりさんは、狐、狗、狸を犬神を造る製法で三頭合わせた禍々しい強烈な威力を持つ呪詛の類が発端だと丸尾末広の絵柄を想像しながら考えていたので、少々がっかりしました。

テーブル・ターニングについて少し補足します。数人でテーブルを囲み手を乗せて質問をすると、やがてテーブルがひとりでにガタゴトと動いたり、傾いたりします。そこで、出席者の中で霊能力がある人を媒介として、霊界からのお告げを受けるというのが一連の流れです。
以下の画像のように動くようです。


激しく動くテーブル(出典:spiritarchive.org

いやいやいやいや……(笑)。

日本にテーブル・ターニングがもたらされた時には、お櫃を三本の竹で支える形の物で代用したようです。それが「こっくり、こっくり」と傾く様子からこっくりさんと呼ばれるようになり、やがてこっくりに「狐、狗、狸」の文字をあて「狐狗狸」と書くようになったのです。

後付けで禍々しくなっていく名前に、かなりテンションが下がりました。

また、ウィジャ・ボードが誕生する以前にも、死者と交信するための道具はいろいろとありました。例えば中国にもその兆候が見てとれます。これは扶鸞(ふらん・ふけい)と呼ばれ、こっくりさんなどと同様に、砂を敷いた版の上に、文字や記号が書かれ、お告げとするものです。他にもネイティブ・アメリカンなど、世界各地で霊との交信を図る道具が散見されます。

ウィジャ・ボードに特化して簡単にまとめるならば、スピリチュアリズムなどで流行した降霊術やテーブル・ターニングなどが世界中に伝播し、徐々に形を変え、誰でも気軽に使える玩具として認知され、数度の流行り廃りを経て、今に至るわけです。有名な発売元としては、1892年に、アメリカのパーカ・ブラザーズ社が「Ouija board」として販売を開始しています。ちなみに、同社は「モノポリー」の初代発売元でもあります。凄い振り幅です。

あの世とこの世を繋ぐ道具というのは、いつの世も求められていたのでしょう。


丹波哲郎「大霊界」(出典:amazon

ところで、あの世が本当にあるのか? というのは諸説ありますが、実際に丹波哲郎より、2007年7月17日に「世のため、人のために尽くし明るい笑顔で人生を頑張ったのちには、それに見合った素晴らしい世界があります」とのメッセージが霊界から届けられたことにより、証明されています。

ウィジャ・ボードはなぜ勝手に動くのか?

ウィジャ・ボードがなぜ勝手に動くのかということに関しては、いくつかの考え方があり、

「いや、やっぱり霊が原因だよ派」
「潜在意識がそうさせてるんだよ派」
「筋肉が勝手に動いてるんだよ派」

などに分かれているようです。霊が原因というのは、自然霊や動物霊、悪魔の類が憑依することによって動くと考えられています。

潜在意識説では、興じている人の潜在意識が反映され、本人は気付かないものの、指が動いているという説です。

筋肉疲労説は、不覚筋動という筋肉疲労により、どうしても僅かに動いてしまう腕の動きに反応し、コインやプランシェットが動くと、動いた方向へ力を入れて動かそうという意識が働いてしまうという説です。

現在は、潜在意識、筋肉疲労、またはその両方が原因であると言われているという説が有力なようです。他にも、実は人間は潜在能力の30%しか引き出せていないという説があります。ということは、残りの70%の中に、霊界と交信できる力があっても何ら不思議ではありません。これは北斗の拳で見たので間違いありません。

ウィジャ・ボードやこっくりさんなど、多くの降霊術に共通するのは、どれも自動記述(オートマティスム)が取られていることです。自動記述とは、何かに憑依され、肉体を支配されているかのように、自分の意識とは無関係に動作を行ってしまう現象のことですが、これは北斗の拳で言う「夢想転生」のようなものだと考えていただければ、30%くらいは合っているはずです。

実際に、自動記述をアートに利用したアンドレ・ブルトンは、夢想転生によって「磁場」や「溶ける魚」を執筆しています。さすがに無理がありました。嘘です。

取り憑かれるだけじゃない、ウィジャ・ボードの危険性

低級な自然・動物霊や悪魔が危険そうなのは言わずもがなですが、ウィジャ・ボードの厄介なところは、気軽にできる割に、精神障害を負うリスクが常に伴うところです。強烈な自己暗示による精神崩壊や、集団ヒステリーが引き起こされた例は枚挙に暇がありません。

精神科医などの医療従事者が安易なウィジャ・ボードの使用は避けるべきだと言っている他に、霊能力者や超常現象信者、心霊学者、祈祷師からエクソシストまでもが「マジで危ないからやめときなさいよ」と言っています。


悪魔に取り憑かれた人の一例(出典:「The Exorcist」YouTube

余談ですが、上記の画像でお馴染み、映画「エクソシスト」のテーマ曲である、マイク・オールドフィールドの「Tubular Bells, Part 1」は実は25分58秒の超大作となっています。映画の先入観を抜きにして、ぜひ聴いてみてください。そして、続けざまに「Tubular Bells, Part 2」を聴いてください。そう言えば、映画でも原作でも、ウィジャ・ボードを使うシーンがありましたね。

話を戻しましょう。つまり、科学・オカルト問わず、その道のプロが危ないと言っているのですから、霊的なもののあるなしに関わらず、安易に行わない方が良いのです。かの有名な予言者、エドガー・ケイシーですら、ウィジャ・ボードで降霊を行うことの危険性に言及しています。

それでも、どうしてもウィジャ・ボードが欲しい! エルビス・プレスリーが本当に死んだのか確かめたい! という人は、amazonで注文できますし、お急ぎ便も使えますが、果たして通販で購入したウィジャ・ボードに霊が降りるのかは疑問です。

本格的な物が手に入れたい場合は、中古で血糊がべっとりついていたり、いかにも禍々しいオーラを放っている年代物を購入するべきでしょう。また、木の板を購入し、シルクスクリーンでプリントするなど、オリジナルで作成してしまうのも一興です。かく言う私も、過去オカルトグッズで一発当てようと自作のウィジャ・ボードを作成し、販売していたことがあります。しかし、全くの家内制手工業のうえ、作っているうちに急に具合が悪くなるなどのベタなアクシデントや、製作に1枚3週間かかり、利益が全く見込めない為、現在生産中止となっております。

このように、手軽に入手でき、欧米ではクリスマスなどで普通にプレゼントされるウィジャ・ボードですが、あるカトリック司祭の話によれば「霊は簡単に呼べるけど、除霊はできぬ」とも言われています。紹介しておいて「やるな」というのもおかしな話ですが、やはり降霊は勧められません。ウィジャ・ボードに関わらず「触れてはいけないもの」というのは意外にも身近に転がっているものです。やる際は必ず自己責任で、できれば専門的な訓練を受けている人と共にやりましょう。

最後になりましたが、ウィジャ・ボードとは、フランス語で「はい」を意味する Oui と、ドイツ語で「はい」を意味する Ja から作られた造語です。つまり、あるはずの「いいえ」が無く、そこには「はい」という肯定しかないのです。おそろしや。

街角のクリエイティブ ロゴ


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