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小説の中で登場した名言フレーズ10選

加藤広大 加藤広大


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8. 『ニューロマンサー』ウィリアム・ギブスン著/黒丸尚訳(1986年)/早川書房

港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった。
『ニューロマンサー』より

SF小説の金字塔、サイバーパンクの代名詞、ウィリアム・ギブスンが著した『ニューロマンサー』の冒頭、最初のフレーズです。もうこの小説、これで終わってもいいのではないか? と感じてしまうほどのキレ具合です。ちなみに、どんな文章でも頭にこの1文を付ければSFっぽくなります。

あらすじはと言いますと、巨大な電脳ネットワークが地球を覆い尽くし、サイバネティクス技術が発達した世の中は「ザイバツ」と呼ばれる巨大企業と「ヤクザ」がハバをきかせる近未来。伝説のハッカー「ディクシー・フラットライン」の弟子であった主人公のケイスは、チバ・シティという電脳都市でドラッグに溺れながら街の空気のように淀んだ暮らしをしています。そんなある日、彼の元にとある女性が依頼をしにやって来て・・・という話なのですが、とにかくカタカナ、造語、専門用語が多くて、初見では何を言っているか一向に理解できませんし何度読んでも分からない部分もあります。誤解を恐れずに言ってしまえば、アニメ版の「攻殻機動隊」のような世界観と言えば通りが良いでしょうか?

が、それを調べたり、なんとなく分かった気になってコンピューター・カウボーイを気取りながらインターネットへジャック・インするという中二病行為もまた楽しいものです。映画化も決まったそうで、こちらもとても楽しみですね。

9. 『銀河ヒッチハイク・ガイド』ダグラス・アダムス著/安原和見訳(2005年)/河出書房新社

主要な銀河文明の歴史には例外なく、それぞれに明確に異なる三つの段階が認められるようである。すなわち、生存、疑問、洗練の三段階であるが、これはまた、いかに、なぜ、どこの段階とも呼ばれている。
たとえば、第一段階に特徴的な問いは「いかにして食うか」であり、第二段階の問いは「なぜ食うのか」であり、第三段階の問いは「どこでランチをとろうか」である。
『銀河ヒッチハイク・ガイド』より

SF小説をもうひとつ。ダグラス・アダムスが著した『銀河ヒッチハイク・ガイド』に登場する「銀河ヒッチハイク・ガイド」と呼ばれる、金欠のヒッチハイカーが1日30アルタイル・ドルもかけずに宇宙の脅威を見て回れるような情報がたくさん詰まったイカした電子的な本のようなものに書かれている文章の1編です。

この小説に関しては、どんなに言葉を割いて説明しても、結局は「42」という結論に収束してしまうので、特に何も説明することはありません。「42」が何か? それは「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」です。この永遠の疑問に付いて素敵な答えを求めている方々には非常に辛い回答かもしれませんが、これは事実です。嘘だと思うならGoogleで「42」と検索してみてください。さすれば「42」が答えとはどういうことなのか? そしていざパニックになった時、タオルの在り処が分かっていることの大切さを感じることができるでしょう。

10. 『蛇のみちは 団鬼六自伝』団鬼六(1997年)/幻冬舎アウトロー文庫

「よっしゃ、話がついた。兄ちゃん、わいの女房とここでやれ」
『蛇のみちは 団鬼六自伝』より

最後は『花と蛇』で有名な団鬼六の自伝から、非常にパンチのあるフレーズです。冒頭、大晦日の夜、新世界の将棋クラブで真剣(ここでは賭け将棋)に負けたおっさんが「金がないから払えない、ちょっと付き合ってくれ」と団鬼六を飲み屋に誘い、なぜか勘定を支払わせた挙句、自宅に連れ込んだ際、団に言い放った言葉です。

もちろん「こんな辛気臭い場所で、こんな真剣師のおっさんの女とはやりたくない」と断固拒否の構えをとるのですが、おっさんは「それはいかん。顔が立たん」とあの手この手で女房を抱かせようとします。結局、なぜか「女房とおれがやるところを見ろ」と公開交尾をはじめるのですが、このおっさんと女房のやり取り、もちろんその前のドヤ街の飲み屋の描写に本当に人間の業みたいなもの、言ってしまえば落語のようなやり取りが非常に人間味あふれていて、面白いんです。

あくまで自伝ですから、小説というのは少々語弊があるかも知れませんが、事実は小説より奇なりと昔から言いますように、非常に物語性がある作品なので、こちらをご紹介させていただきました。
 

以上、「小説の中でグッときたフレーズ」たちでした。書いている最中についつい小説を読みなおして盛り上がってしまったため、執筆に膨大な時間がかかってしまったという私事もありますが、今回はこれにてお開きです。

我ながら偏った選となってしまい、お詫び申し上げる他ありませんが、雨の時期には部屋にこもってゆっくり読書。という時間の使い方も、たまには良いのではないでしょうか。私もそうしてみようと思います。それでは。

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