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小説の中で登場した名言フレーズ10選

加藤広大 加藤広大


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6. 『実録・外道の条件』町田康著(2000年)/角川文庫

「雨、降ってきましたね」と、意外なほど大きな声が出た。
『実録・外道の条件』より

作家、町田康がおそらく自分の経験をアレンジして作りあげたであろう、業界に巣食う外道との戦いを描いたこの作品。クリエイティブな仕事を生業にしている方にはまさに「あるある」といった感じで怒涛のように押し寄せる理不尽を追体験できる名作です。

もう本当に読んでいて、「いるいるこんな奴」と今ならTwitterで「こんなやつから仕事の話きましたよーん。あほか!」と晒されてしまいそうな案件ばかりですが、笑いながら読んでいたら気付けば泣いていた。くらいには同情できる理不尽・エンターテイメントとなっております。

これもまた短編仕立てでして、この台詞は「ロックの泥水」の中で語られるものですが、イケイケの、ノッてる、ガンガンいってるベンチャープロダクションの女社長の描写はまさに必読。作品自体は10年以上前のものですが、今の時代でも充分「いるいる、こういう奴」と楽しみながら憤れますので、未読の方はぜひ。

7. 『命賣ります』三島由紀夫(1968年)/集英社

夜が羽仁男の胸に貼り付いた。夜はぺったり彼の顔に貼り付いて窒息させるかのようだった。
『命賣ります』より

三島由紀夫の小説『命賣ります』の最後、主人公の羽仁男が警察署からつまみ出され、夜空を見上げるシーンの描写です。私は専門家ではないですし、研究もしていませんから三島由紀夫の文章だったり、思想だったりと、おいそれと話す立場ではありませんが、この『命賣ります』とその後の三島由紀夫の人生を考えると、とても感慨深いものがあります。ここでは記しませんが、文中、「これは羽仁男が言っているんじゃなくて、三島が言っているんじゃないか」なんて箇所もあります。

この作品は主人公、コピーライターを生業としていた羽仁男が、ある日なんとなしに自殺を決意し、失敗したことから、新聞に「命賣ります」と広告を出し、いろんな目的で彼の命を「買いにくる」人たちが現れ、そのエピソードがやがて1本の線に繋がっていく。というお話です。数ある三島作品の中でも、『不道徳教育講座』のように分かりやすく、すらすらと読めます(内容が薄いわけではありません。念のため)ので、入門編に最適、とは言えませんが、読んでおいて損はない名作です。

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