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小説の中で登場した名言フレーズ10選

加藤広大 加藤広大


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4. 『ジャンキー』ウィリアム・バロウズ著/鮎川信夫訳(1980年)/河出書房新社

麻薬をやめるということは、一つの生き方を放棄することだ。
『ジャンキー』より

偉大なるジャンキー、ウィリアム・バロウズが著したカウンターカルチャー、麻薬小説の傑作『ジャンキー』の中で、麻薬に対して彼の考察が綴られた1文です。

この後、バロウズは「麻薬がもたらす損失や恐怖をいくら並べ立てたところで、麻薬をやめる推進力にはならない」とも言っています。本作には、バロウズが麻薬から得た知見がところどころに散りばめられていますが、どれもこれも医療的に正しいかと言えば、「あくまで個人の感想です」的なものです。

けれども、伝説のジャンキーが語る「個人の感想」は「なるほど、だから麻薬はいつの時代も人をとりこにするのだな」だったり「これは・・・絶対やめられないなあ・・・」と、麻薬未経験者にある意味での注意喚起を促しています。実際私もこれを読んで「やめとこう」と感想を抱いたクチです。文章も非常に読みやすいので、中学生くらいの課題図書にでもしておけば、むしろ麻薬に手を出す若者が少なくなりそうだと思うのですが、文科省の方、いかがでしょうか?

5. 『町でいちばんの美女』チャールズ・ブコウスキー著/青野聰訳(1994年)/新潮文庫

「詩はごくごく短いあいだに、ものすごく多くのことを語る。散文は大したことはなにもいわず、量ばかりかさむ」
『街でいちばんの美女』より

アメリカの詩人・作家であるチャールズ・ブコウスキーが著した『町でいちばんの美女』という短編集の中の1作「あるアンダーグランド新聞の誕生と死」内で、「コラムを書け」と言われてブコウスキーの返答「おれは詩人だよ」に対して「詩と散文のどこが違うんだよ」と質問されたことへの回答です。

「この短編小説の中でおそらく一番長い物語でそれを言うのか」と思わず笑ってしまいますが、ブコウスキーらしい一級品のジョークなのではないでしょうか。

全編とおしてゴシップ誌に掲載されるような猥雑な話の連続ですが、「下品」と断じるのは大間違いです。大酒飲みでクソッタレだけど、どこか優しくて、読み終えた後にはなんとも言えない哀しみ、人生の滋味みたいなものがちょっぴり残る、いい文章です。

ちなみに、この小説で私が一番グッときたフレーズは、実はあとがきを寄せた訳者である青野聰氏の1文だったりします。これはさすがに本編ではないので取り上げられませんでしたが、以下に引用しておきます。

・・・じゃあな、チャールズ、とうぶんあんたの顔はみたくないよ。
『街でいちばんの美女』より

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