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小説の中で登場した名言フレーズ10選

加藤広大 加藤広大


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2. 『最後の喫煙者 自選ドタバタ傑作集1』筒井康隆(1987年)/新潮文庫

「愛煙家へのあたたかいお心づかい」咳き込みながら日下部さんは言った。
『最後の喫煙者 自選ドタバタ傑作集1』より

筒井康隆が1987年に『小説新潮』において発表した短編小説の中の1文です。この場面、嫌煙運動がエスカレートした世界で喫煙者への排斥が待ったなしとなり、徹底的に弾圧されている中、とうとう嫌煙過激派に家を放火されてしまった際に放たれる台詞なのですが、洒落が効いていて思わず笑ってしまいました。他にも古今東西のさまざまな差別ネタが盛り込まれ、非常に風刺のこもった小説となっております。

しかし、笑っているだけでは済まされません。嫌煙というフレームではありますが、ささいなことでもヒートアップしてしまい、ヒステリックになってしまえば簡単にこのような状態に行き着くこともある。という怖さも同時に教えてくれる小説です。喫煙者も非喫煙者も、これを笑いながら読んで語り合えるような世の中になると戦争もなくなると思うのですが、いつの世も喧嘩やレッテル貼りは絶えません。どちらが悪いとは一概には言えませんが、冷静な議論をしていただきたいものですよね。私は煙草でも吸いながら、事の成り行きを眺めることにします。

3. 『麻雀放浪記(四)番外編』阿佐田哲也(1981年)/角川文庫

「おのれがいたずらしたんだから、恨むなァおのれしかねえが、俺はおのれも恨んじゃおらん」
『麻雀放浪記(四)番外編』より

阿佐田哲也の麻雀放浪記シリーズの第4作より。親指トムのアダ名を持つ李億春が留置場でドサ健に言うこの台詞。李は本当にギャンブル狂いと言いますか、もう頭おかしいんじゃないかと思うくらい「強い」と思った相手に突っかかり、付き纏い、勝負を挑むのですが、その勝負することしか知らない愚直な男の悲しさと、勇ましさが同時に現れている素晴らしい台詞です。

ちなみに李は過去の悪事により、指をすべてツメられていまして、そのことも関連しているシーンです。「好きなことを通せないならば、この指を失くした意味がないじゃないか」とも言っています。まさしく「好きなことで生きていく」。昭和に生きたYouTuberの走りだとも言えるでしょう。

麻雀に縁がある方はぜひとも、この李億春の生き様を堪能してみてください。ちょっとイキ過ぎですが、一度でも賭け事の快感に身を任せたことがある方なら、きっと何かしら通じるものがあるはずです。そして何より嬉しいのは、破滅の快感をも安全に、文庫本代のみで追体験できる。という点です。

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