すごいぞ、Netflix。
Netflixが絶好調。世界のみんなが家にいるのであたり前ですね。
時価総額でディズニー超え。いやはや、すごい。
Netflixといえば、オリジナル作品。Netflixでしか見られない。映画館でも見られない。それがとんでもなくクオリティが高いんですから、そりゃ加入しますよ。
「ROMA/ローマ」に「サバハ」、「アイリッシュマン」 「2人のローマ教皇」 「マリッジストーリー」と、街クリでも各ライターが高く評価し、コラムを書いています。
オリジナル作品以外でもおすすめ映画を加藤さんが紹介していますので、こちらも是非。
「こんな時だからこそ」とは言わないが、Netflixで観れるおすすめ映画たち
そして、僕が今回紹介するのはNetflixオリジナル映画
「タイラー・レイク -命の奪還-(以下タイラー・レイク)」です。
今回もネタバレありなんですが、ネタバレ部分は相当後半です。
例のごとく周辺情報を掘り下げまくるので、未見の方も読んでください。
そして、見てください。
蹴る、撃つ、殺る。クリヘムの極上アクション
ストーリーは非常にシンプル。
インドの麻薬王の息子・オヴィが、バングラデシュの麻薬王に誘拐された。麻薬王に牛耳られた都市ダッカに潜入した傭兵タイラー・レイクはオヴィを救出し、街を脱出できるか?
タイラー・レイクを演じるのはクリス・ヘムズワース。雷神ソーが、ハンマーを銃に持ちかえました。
出典:IMDb
タイラーはオーストラリア人という設定ですが、オーストラリア出身のクリス・ヘムズワースにあわせたということです。クリスが自由に役づくりできるように。タイラーの背中のタトゥーが、オーストラリア先住民のアボリジニー・アートのようでしたが、これもオーストラリアという設定からとっているのかもしれません。
「メン・イン・ブラック」よりよっぽど……おっと誰かきたようだ。
出典:IMDb こっちより断然……ねえ……。
ともあれ、「タイラー・レイク」の分かりやすい魅力はクリス・ヘムズワースのアクション。蹴る、撃つ、殺す。「殺傷」にふりきっています。拳銃を短く2発撃つダブルタップ。1発目で身体の自由を奪い、2発目で確実に命を奪う。アメリカなど多くの特殊部隊で採用されている動きもふんだんに盛りこまれていました。パンッパンッと小気味いい銃声がアクションシーンにリズムを与えてくれる効果もありました。
最近のアクション映画で連想するのは「ジョン・ウィック」(2015)でしょうね。「犬を殺しただけなのに」とも呼ばれている「ジョン・ウィック」。呼んでいるのは僕です。
出典:IMDb
「ジョン・ウィック」はカンフー(近接格闘)とガンアクション(銃撃)をあわせたガン・フーと呼ばれるスタイルを確立。とにかく殺して、殺して、殺しまくる。殺傷の美学がつまっています。「ジョン・ウィック」はファンタジーの領域にも入っています。3作目の「ジョン・ウィック:パラベラム」の馬を使ったアクションなんてほぼコメディ。「タイラー・レイク」は現実的です。リアル寄り。その場にあるものを活用して殺すことはしていましたが、あくまで自然。その点では、マット・デイモンの「ボーン」シリーズに近い感じです。
映画の序盤、救出自体はすんなり成功します。問題はその後、物語の8割くらいは逃走に割かれます。麻薬組織、麻薬王の息のかかった警察、ダッカの街が牙をむきます。戦闘と無縁の少年を連れていることもあり消耗していくタイラー。
クリス・へムズワ―スの力強い前蹴りと、ボロボロになる姿を堪能できる。これだけでご飯何杯でも食べられるって人は多いでしょう。事実、とても魅力的です。
出典:IMDb
細かいアクションは見て堪能してくださいとしか言えませんが、特に圧巻なのはカーチェイスとアパートで繰り広げられる疑似ワンカットによる長回しアクション。
アパートのパートは、アルフォンソ・キュアロン監督「トゥモロー・ワールド」(2006)を意識したかのような作りでしたね。「トゥモロー・ワールド」は逃げる主人公をカメラが追いますが、「タイラー・レイク」はアクションしながらですから、似ていながらもきっちりアップデートしていると思います。
出典:IMDb
ワンカットは「緊張感の継続」が良いですよね。「ここワンカットでいく気だ」と気づくと、カットが切れるまで見る側もグッと緊張してくる。前後左右から敵が現われながらの格闘・銃撃の連続ですからなおさらです。オヴィの必死な抵抗もいいアクセントになる。カットが切れた瞬間、思わず深呼吸したくなりました。
一方、カーチェイスは「どうやって撮ってんの?」の連続。撮影方法がNetflixのツイッターで紹介されていました。
#サム・ハーグレイヴ 監督は
『#ジョン・ウィック』を放った
87eleven Action Designに協力、◤あの『#アトミック・ブロンド』の
“長回し”格闘場面を作り上げた人物◢本作にも10分間の“疑似ワンカット”が…
監督は自分が上げたアクションのハードルをさらに高めた!#タイラー・レイクがアツい pic.twitter.com/FSaRAN4QQ6— Netflix Japan (@NetflixJP) April 25, 2020
ボンネットにカメラマンが乗っています。ひとりタイタニック状態。ぜんぜんロマンティックじゃない。そしてなんと、カメラマンは監督であるサム・ハーグレイブ自身。身体はりすぎ。
映画監督が、なんでこんなことやってるの?
経歴を知ると納得できます。アクション、長回しのひとりタイタニック。「タイラー・レイク」という映画は、この人だからこそ成立したんだと。
監督は、元キャプテン・アメリカ
さて、監督のサム・ハーグレイブ。
出典:IMDb
サム・ハーグレイブ
ああ、サム・ハーグレイブ
サム・ハーグレイブ
名前だけでも覚えてかえってください。
今作が初監督。その場合、あんまり書くことがなかったりしますが、今回は違います。
先に「タイラー・レイク」の脚本家とプロデューサーについて書きましょう。急がば回れです。
脚本を手がけたのはジョー・ルッソ。
プロデュースはジョー・ルッソとアンソニー・ルッソのいわゆる「ルッソ兄弟」です。
出典:IMDb 左がジョーで、右がアンソニー。
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(2014)、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016)を手がけ、両作の評価の高さから「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」(2018)、「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019)の監督に抜擢。MCUに最高のフィナーレをもたらしてくれた兄弟です。「アベンジャーズ/エンドゲーム」を久々に見ましたが、やっぱり号泣しちゃったよ……。
予告編でも「アベンジャーズのルッソ兄弟最新作」のような紹介が目立ちます。サム・ハーグレイブが初監督で知名度が低いためのプロモーション面での判断もあると思いますが、それだけでもなくて。
サム・ハーグレイブを映画監督として見出したのがルッソ兄弟だといえるんです。
彼はもともと、スタントマンです。有名どろこだと、クリス・エヴァンス演じるキャプテン・アメリカのスタントダブルです。スタントダブルは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(2019)でブラッド・ピットがやっていたアレですね。
ルッソ兄弟が監督した「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」にもクリス・エヴァンスのスタントダブルとして参加しています。
出典:IMDb 左がサム・ハーグレイブ。それにしても、キャップうしろ! うしろ!
その後、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」ではスタント・コーディネーターとしてクレジット。キャプテン・アメリカのスタントを演じる側から演出する側になります。
そして、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」、「アベンジャーズ/エンドゲーム」ではスタント・コーディネーターとセカンド・ユニット・ディレクターを兼務します。セカンド・ユニット・ディレクターはアクション監督ともよばれ、アクションシーンでのカメラワークやカット割りも含めた全体設計と演出をおこなうポジション。
ちなみに、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」、「アベンジャーズ/エンドゲーム」でキャプテン・アメリカのスタントダブルを担ったのは、弟のダニエル・ハーグレイブ。
ルッソ兄弟のもとでキャプテン・アメリカのスタントダブルから、映画全体のアクションを統括するポジションにまでなり、映画づくりを学んだのがサム・ハーグレイブという人なんです。
だからこそワンカットアクションシーンを設計し、自ら車のボンネットに括りつけられて撮影するなんて離れ業ができたんですね。撮りたいものを、撮ったんです。
監督について語るべきはルッソ兄弟との関係だけではありません。
キーワードは「87イレブン(エイティセブン・イレブン)」。
近くて便利なお店のことではありません。あなたとコンビになりたいわけでもありません。
サム・ハーグレイブが中核メンバーとなっているアクション・スタジオ「87イレブン・アクション・デザイン」の通称。アクションシーンのコーディネートから俳優の訓練まで、映画やドラマのアクションシーンに関するすべてを請け負う会社です。アクションに関する凄腕の傭兵集団という感じでしょう。
「87イレブン」は、2人の男が2006年に設立しました。デヴィッド・リーチとチャド・スタエルスキ。2人はブルース・リーと共にジークンドーを生んだ武術家ダン・イノサントの武術・格闘技塾であるイノサント・アカデミー出身の格闘家、スタントマンでした。
出典:IMDb 左がチャド・スタエルスキ、右がデヴィッド・リーチ。
チャドは「マトリックス」シリーズでキアヌ・リーヴスのスタントダブル。デヴィッド・リーチは「ファイト・クラブ」でブラッド・ピットのスタントダブルをつとめました。スタントマンとして活躍した後「87イレブン」を設立。そして、2人が共同で監督したのが「ジョン・ウィック」です。
「ジョン・ウィック」は、チャド・スタエルスキの単独監督として2作目、3作目が公開され、更なる続編もアナウンスされています。デヴィッド・リーチは「アトミック・ブロンド」(2017)や「デッドプール2」(2018)を監督。
「87イレブン」もハリウッドのアクションまわりに欠かせない会社となりました。
「87イレブン」というハリウッドのアクションの潮流を生む環境に身を置き、ルッソ兄弟に見出され映画づくりを学んだ元キャプテン・アメリカ。
それが、サム・ハーグレイブという男なんです。たくさんの人・作品が出てきましたが、覚えることはひとつ。
サム・ハーグレイブ
ああ、サム・ハーグレイブ
サム・ハーグレイブ
出たがりの人でもありまして「タイラー・レイク」では救出をアシストするスナイパーのG役で出演しています。
出典:IMDb 自分の見せ場もつくる男、サム・ハーグレイブ。
バングラデシュとインドの歴史も知っておきたい
今更感もありますが、どうしても紹介したいので書きます。
インドとバングラデシュについてです。
物語は、ダッカの空撮からスタートします。
出典:IMDb
密集しています、密です。バングラデシュは人口密度が世界一なんです。日本の半分以下の国土に、日本以上の人口。首都ダッカは、とびぬけて高い。市街地では1平方キロメートルあたりに3万人、すごいところだと4万人が住んでいるといいます。東京都23区の人口密度が1万4千人、ニューヨーク市が1万人なので、とんでもなく密です。
バングラデシュという国名になったのは1971年。それまでは東パキスタンと呼ばれていました。東パキスタンと呼ばれたのも1955年から。この地域は、長いことイギリス領インド帝国の一部だったんです。
第二次世界大戦後インド帝国は崩壊し、インドとパキスタンに分離独立しました。
この時、インドをはさんでいるにも関わらずイスラム教地域なことから現在のバングラデシュはパキスタンの一部「東パキスタン」として独立することになりました。インドはヒンズー教、パキスタンはイスラム教という決定的なちがいがあったんです。分離独立はその後、数回の戦争がおき、大量の難民を発生させます。インドとパキスタンは今でも仲が悪い。
同じ宗教を信仰するというだけで数千キロ離れた場所をひとつの国として統治することにも限界がでてきます。そして、東パキスタンはバングラデシュになったというわけなんですね。
出典:Wikipedia 緑の部分が当時のパキスタン。右が東パキスタン。遠っ!
歴史的に複雑な背景をもつバングラデシュとインド。しかも両国間では「ヤーバー」という麻薬の密売が、近年問題になっているようです。
インドとバングラデシュの麻薬組織の対立という設定は、イギリス植民地時代からつづく両国の歴史から着想しているのかもしれません。
ルッソ兄弟がプロデューサーで、ジョー・ルッソが脚本ということで、特にそう感じます。「現実の問題をフィクションに取り入れつつ、エンタメとして昇華させる」のがルッソ兄弟の特徴です。キャプテン・アメリカの2作では「人権と戦争」「管理と自由」、アベンジャーズでは「環境・資源問題」を反映させていました。
「タイラー・レイク」には原作があります。2014年発行の『Ciudad(シウダッド)』。ルッソ兄弟とグラフィック・ノベル作家アンディ・パークスが共に作ったグラフィック・ノベルです。
出典:Amazon.co.jp
『Ciudad(シウダッド)』では、誘拐されたのは女性で救出に向かう都市は、南米パラグアイのシウダー・デル・エステ。映画化に際して設定が変更されているんです。どんな意図や事情があったのか。上で書いたような歴史的背景の影響があったのか、ルッソ兄弟に聞いてみたいものです。
死に救いを求める男、タイラー・レイク
※※ここからラストに関するネタバレを含みます※※
タイラー・レイクが強い傭兵というだけではない。
それも「タイラー・レイク」の魅力です。
病気の息子と向きあわず戦地に逃げたことに苦しみ続けています。水中に身をおくこと、危険な依頼をひき受けること。死に近づくことで息子に会いたい、許されたい気持ちのあらわれでしょう。
出典:IMDb
タイラーは「死」に救いを求めているんです。その点で「LOGAN/ローガン」(2017)に近いものがあります。「LOGAN/ローガン」は、ソーと同じマーベルコミックのヒーロー、ウルヴァリンの最後の戦いを描いた作品。
出典:IMDb
「LOGAN/ローガン」は、特殊能力をもつミュータントがウルヴァリンの他に数名しか残されていない世界が舞台。不死身のウルヴァリンは仲間を救えなかったことなのか、たくさんの殺しをしたことへの後悔からなのか、罪を贖える意味のある死をもとめます。不死身の身体を殺せる金属製の弾丸を自殺用に持ち歩いてもいます。
ウルヴァリンの細胞から作られた少女と出会い、少しずつ心を通わせていきます。そして彼は、次世代に希望を繋げることに贖罪を見出します。ラストでは、おなじく自分の細胞から作られた敵との戦いにのぞみます。
出典:IMDb
ウルヴァリンもタイラーも大切な人を、たくさんの人を死なせたことに苦しみ、あたらしくできた大切な人を守るために命をかけます。
また、タイラーと息子、タイラーとオヴィの関係を際立たせるように多くの親子が描かれ、対比されていきます。父と息子の物語でもあります。
タイラーと息子
ムンバイの麻薬王とオヴィ
サジュと息子
タイラーとオヴィ
ダッカの麻薬王アシフと、少年ファラドも親子のような関係になっていきます。
タイラーは子どもが相手だと手加減するし、殺さず逃がします。プロの流儀にも思えますが、息子に対するうしろめたさも感じられます。そして、タイラーに致命傷を与えるのが、見逃したファラド。
息子の命に向きあわなかった男が、麻薬王の息子・オヴィを守るために、麻薬王の息子(のような存在)・ファラドに命を奪われる。自分の罪を、オヴィとファラドの殺人の罪を背負って去るかのように川へ沈んでいきました。
出典:IMDb
ラスト、オヴィは最後のタイラーの姿と自分を重ねるかのようにに水に飛びこみます。人を殺したことへの罪悪感からか、タイラーに会えると思ったからか。タイラーらしき人物を映して物語は終わりますが、あれは現実か幻か。
最後のカットについて、サム・ハーグレイブはこのように答えています。
「映画を観たあと、みなさんに話し合ってもらえればと思っていました」
「あなたが感じたことが、あなたにとっては真実。それでいいんです」
THE RIVER
どっちやねん! 試写後の観客の解釈が真っ二つだったことも考慮してボカシているみたいなんですけどね。監督がこう言っているので僕の真実をいうと、タイラーは死んでいた。
ダッカの麻薬王・アシフも殺されました。あれがタイラーの死に対する復讐なのか、オヴィを守るためなのか、いろいろ解釈ができますが僕にとって重要なのはファラドの存在。
出典:IMDb
「オヴィ」と「ファラド」、2人の対比で考えてみます。
ムンバイの麻薬王の息子として不自由なく庇護のもとで生きてきたオヴィ。
ダッカの貧困のなかで必死にサヴァイブしてきたファラド。
対象的な2人が、それぞれ疑似的な父を得た。人を殺す経験をした。そして最後は、その父を失う。それが2人にどんな未来を、運命をもたらすんでしょうか。だから、アシフが殺されるならタイラーも命を落としている。同じものを得て、同じものを失った2人の少年の物語。「タイラー・レイク」は、そんな風に解釈もできます。
もともとタイラーは息子の死後、死んだようなものだったんではないでしょうか。オヴィとファラドという次世代のために何かを遺すことで、ようやく死ぬことができた。自分の息子にできなかったことはやり遂げた。
水に飛びこむシーンをつかった円環構造。罪と赦し。父と息子。単なるアクションもので終わらせない魅力が詰め込まれているんですから、さすがジョー・ルッソという感じです。
いや、細かい不満はあるんですよ。エピローグでファラドのその後を見せてくれたら、オヴィとの対比が際立ったのにとか。サジュがオヴィを奪おうとしたのは、金がないからかよ! とかね。
重箱の隅をつつきたくなるのは、基本の質が高いからなんですけどね。
「俺(奴)を信じるか?」というセリフが印象的に使われていましたが、「アベンジャーズ/エンドゲーム」でもトニー・スタークがキャップに同じセリフを言うシーンがありました。ラストで川に落ちるのは「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」と同じです。MCUファンがニヤリとできるような仕掛けも入っています。しっかり「タイラー・レイク」という物語が魅力的になるかたちで。
出典:IMDb 敵と最終的に共闘する展開もベタだけど、熱い。
続編も決定しているようです。ジェイソン・ボーンやジョン・ウィックのように「主人公の名前シリーズもの」として続いてくれるといいなあと思います。すばらしい作品でした。
配信限定でここまでのアクション映画が作られるんだと示した、ターニングポイントになる作品でしょう。
サム・ハーグレイブ、ぜひ覚えてかえってください。
映画が子どもたちを笑顔にする日が戻ることを願って
今回、コロナがどうとか、世界情勢がどうとか、基本的には入れないようにしようと決めてました。いつも通り「タイラー・レイク」という作品に向きあって書こうと。ただ、調べる中で見つけたこの写真。
ダッカでの撮影中でしょう。なんとも幸せな写真です。映画館に行けない今、新作が見られてアレコレ調べて書けるのはNetflixだからこそです。心からのありがとうです。
ただ、これから撮影されるものは中断、延期、中止だってありえる。この写真のような光景は今現在、奪われているんです。そこでの出会いが素晴らしい映画クリエイターを生みだすことになるかもしれないのに。
僕には世界中でふたたび映画の撮影ができるようになるのを願うことしか、そして映画のたのしさを書いて伝えることしかできません。だからこそ、願いつづけます。書きつづけます。
「タイラー・レイク -命の奪還-」が家で過ごす時間を充実させ、この映画評がさらにたのしみを付加できますように。
それではまた、次の映画で。
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[イラスト]清澤春香