知り合いの知り合いは他人
当たり前である。が、社会に出ると、知り合いの知り合いを友人どころか親類縁者ほどに親しい間柄だと思っている人が出現する。学生時代でも居るとは思うが、社会に出るともっと居る。
全方向から聞こえてくる「おれ、あいつと知り合いだぜ」「仲いいんだぜ」という声。「それ、別に先輩が凄いわけじゃないっすよね?」と言ってはいけない。相手が不機嫌になるだけで何の得もない。相槌を打ちながら徐々に間合いを取りつつ、脱出を図るのが賢い戦略だ。
しかし、そんな「おれ知ってるぜワールド」のなかで日々を過ごしていると、つい自分も知り合いの知り合いは他人のような気がしてくるもので、赤の他人である知り合いの知り合いが10年来の友人のように思えてきたり、知り合いの知り合いの知り合いなのになんだか他人のような気がせず、もしかしたら知り合いの知り合いは一周回って自分ではないのかと思ってしまったり、そもそも自分とは一体なんなのかと鏡の前で考えているうちに一日が終わったりしてしまう。こうなると、もうほとんど病気である。
知り合いの知り合いは他人。肝に銘じておくべきである。
「ここだけの話」は信じるな
「ここだけの話なんだけどさ」「お前にだけは言うけど」など、場所と相手を限定した打ち明け話は信じてはいけない。マラソン大会で「一緒に走ろうね」と誘ってくる奴くらい信じてはいけない。大体皆に言っている。
未だ3分の1の純情な感情を抱いている新社会人の場合、つい「俺にだけ打ち明けてくれるなんて、厳しいけど案外良い人なんだなあ」と感動すらしてしまいそうになるかもしれないが、信じてはいけない。「今度飲みましょう」と毎回言ってくる奴くらい信じてはいけない。大体皆に同じことを言っている。騙されないようにして欲しい。
騙されたと思うと、妙に相手のことがムカついてくるものだが、「そんなこと言って・・・皆にもおんなじこと言ってるんでしょう!」と若干メンヘラくさい台詞を吐いてもいけない。
社会人とは、参加している社会の中で、自身の役割を担い生きる人のことである。見え透いた打ち明け話をされたときのあなたの役割は、「打ち明けてくれてありがとうございます」と感謝したフリをしておくことである。
また、社会に出ると場末の居酒屋やバーなどで、やれ事業をはじめるだの、何億引っ張っただの、景気の良い話をしているオッサンに出会うことがあるが、あの与太話も大概なので、話半分に聞くことをおすすめする。