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理想が高すぎる女【連載】さえりの”きっと彼らはこんな事情”

さえり さえり


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とはいえ、そんなになで肩が無理なこの女。気になる。おそらく外でしか会ったことのなかった男とデートに行って室内に入って上着を脱いだら、肩が滑り台のように下降していて、オーマイゴッドファーザー降臨ヨイショしちゃったのだろう。

残念な思いをした彼女の事情は、こうだ。

 


彼女の名前は、リンコ。年は21歳。綺麗な前下がりボブに、二重でぱっちりした目。明るくてよく話す彼女は、そこそこにモテる。なのに、なぜか彼氏はほとんどできたことがない。彼氏は、高校のときに一人、大学に入ってから二人できた。が、その三人とも3ヶ月以内には別れている。キスにまで至らなかったこともある。リンコはその都度「やっぱちがった」と言い、新しい恋をするために奮闘する。

「彼氏が欲しいのになぜできないのか」を、リンコ自身は「あたしが惚れにくい体質だから」と分析するが、彼女の友人たちは全員本当の原因に気づいている。リンコの見た目に対する理想が、高すぎるのだ。
たとえば、友人のチアキがヨシフミを紹介したときには「彼の手、顔の割に小さいから無理」といい、アイコがカズヒコを紹介したときには「笑った時に唇が上がる角度が尋常じゃなくて怖い」といい、モモコがリュウジを紹介したときには「耳たぶが大きすぎて縁起がよすぎる」といって断った。

チアキもアイコもモモコも、渾身の友達を紹介したのだ。小さい頃つくっていた「シール手帳」でいえば、その中でも最も可愛くて気に入っていて、でも自分は使う機会がないシールを決死の覚悟で「あげる」と差し出したにもかかわらず「シールの裏が汚れているから要らない」と言われたようなものだ。この悲しさたるや、やるせなさたるや。
当然、チアキもアイコもモモコも、「そんなどうでもいいこと言ってたら進まないよ!?」とか「バカなの?」とか言ったけれど、リンコには響かなかった。一度チアキは聞いたことがある。

「ねえ、リンコの理想はどんなのなの? あんた理想高すぎるよ」と。

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