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イヤイヤ期の真っ最中。【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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もちろん、これは私にとっては2回目のイヤイヤ期である。長男の時にも随分と手を焼いたので、それなりの覚悟と許容力は持ち合わせているつもりだった。しかし娘は、想像以上に手ごわかった。ひとたびイヤイヤモードに突入すると、泣く、暴れる、ふんぞり返って頭を打つ、床に寝る、と、様々な手段で親に猛抗議。もうなにをするのも気に入らずに、「いやだ」「だめ」「きらい」その言葉ばかりが続く。

家の中ならまだいい。路上や、さらには電車など、狭い空間に大勢がいる公共の場所だと本当に参る。「お席に座ろう」「いやだ」「じゃあ立っていよう」「いやだ」「抱っこしようか」「いやだ」と大騒ぎされた日には、もうどうしていいかわからず、「すみません、すみません」と冷や汗だくだくで下車するのである。

それに加えもう一つ、女の子だからこその問題もある。「やめてってば~」とか、「いやだっていっているでしょ~」などと言う娘の口調が、私にそっくりなのだ。毎日一緒にいるのだから、口調も似てきて然りだとはわかっているのだが、なんだかイラっとしてしまい、娘のイヤイヤに対応する私も時折苛立ちを爆発させてしまう。我ながら大人げなくて、なにしているんだろう・・・と、結構へこむ。疲労感、倍増。

あまりにも娘のイヤイヤに疲弊した日、夕暮れ時の涼しい時間帯になってから、子どもたちと外に出てみた。日本の夏特有の、湿り気を帯びた空気。右に息子、左に娘。それぞれに繋いだ子どもたちの手が随分大きくなっていたことに、ふと気づいた。よく会うご近所さんが「あら、みんなでお散歩? いいわねえ。今が一番いい時ねえ」と言う。さっきまで鬼の形相だった私も、一応外行きの顔をして「そうですかねえ~」と当たり障りない会話だけする。一番いい時、か。私より何倍も生きていらっしゃる方がそう言うのだ、きっと本当にそうなのだろう。イヤイヤは、成長の証。そう受け止めて、もうちょっとおおらかにあれる自分になりたいと、夕空に思った。

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