地下室のメロディー 【連載】ひろのぶ雑記

田中泰延 田中泰延


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「雑記」なんだから雑に書く。急に思い出したのだが沖縄の「ジューシー」ってなんかフルーツでも入ってるのかと思ったら琉球語で「雑炊」と発音してるだけだったときのガッカリ感と言ったらない。
 

つまり・・・特にこれ以上なにも言うことがなかった。ジューシーの話はもう終わりだ。いいなぁ、この雑さ。なんくるないさ。
 

そういえば、・・・いや、ジューシーの話しかしてないからどこを受けての「そういえば」なのかさっぱりわからないのだが、私は電車が嫌いだ。正確には新幹線のグリーン車を除く電車がだいたい嫌いだ。
 

いちばん気に入らないのは「自分が用のない場所に停まる」点だ。昨日も大阪市営地下鉄谷町線に乗ったのだが、喜連瓜破とか野江内代とかいったい何の用であんな読めないところに停まる必要があるのか。駅名を読むのも一苦労だ。読めますか喜連瓜破。読めますか野江内代。苦労して読む必要があるのか。
 

なぜ電車に乗るのにあんなにお金を払うのか。用のないところに停車して、他人のために待ってやるのだから、むしろお金が欲しいと思う。そんなに嫌いではない新幹線も100%名古屋に停まるのが気に食わない。日本に名古屋は必要かどうかそろそろ日本人全体で考える時期に来ていると思う。
 

その点、自動車は良い。「いや、車だって信号で停まるじゃありません?」と脳内で適当に合成された人物が疑問を投げかけてくるが、信号は違う。それぞれが運転する車同士は、対等なのだ。
 

君はそっちへ行きたいんだね。わかるよ。おれもあっちへ行きたいからね。こうして一つの太陽の下で、同じ時刻に同じ交差点ですれ違うなんて、袖振り合うも多生の縁じゃないか。そんなおおらかな気持ちで、「待ってやる 通してやる」そこには対等の関係がある。そして信号が青になり、前の車がスマホをいじっていて発進が遅れたらやさしくクラクションを20回ほど鳴らしてやさしく出発をうながす自分が好きだ。
 

免許を取って足掛け30年。いろんな車に乗ってきた。最近は「若者の車離れ」などというが、1980年代に免許を取得した私からしたら、車こそ生活の中心であり、必要不可欠なものであり、自分にとっての「文化」だった。
 

私の車歴は、80年代丸出しといっていいほど、チャラい。まず1988年、大学生でありながら仕事もしていてけっこうお金が入ってきた私は、友人から80年代の象徴みたいなこの赤い車を譲ってもらった。

ホンダ・プレリュード。なんでこの車が欲しくなったか。テレビコマーシャルが、かっこよかったのである。見ていただこう。

Reference:YouTube

今見てもかっこいい。使われている音楽は、「地下室のメロディー」のテーマ曲だ。アラン・ドロンとジャン・ギャバンが共演したことで有名な、実にスタイリッシュな1963年のフランス映画だ。

Reference:YouTube

テレビCMも、映画にオマージュを捧げるかのようなシリーズ展開が続いていた。

Reference:YouTube

そもそも、「地下室のメロディー」というタイトルからしてかっこいい。日本語の響きに「の」をプラスして外来語で締めくくるとなんでもかっこよくなるのである。たとえば、1958年のフランス映画「死刑台のエレベーター」・・・これなんかもかっこいいではないか。
 

映画や本や音楽のタイトルについては、【「の」の法則】というものがある。これは「宮崎駿の監督した映画に関する法則で、スタジオジブリ作品で製作担当などを務めた奥田誠治が提唱した」とWikipediaには書いてある。
 

風の谷のナウシカ
崖の上のポニョ
となりのトトロ
借りぐらしのアリエッティ
 

こうすれば、いかにもタイトルらしくてヒットする、というのである。
 

前半の場所や時間を限定する意味合いの日本語と、後半のちょっと意味不明なカタカナ語を「の」で繋ぐことによって、人間はつい、その関係やつながりを求めてしまうのだ。そういえば、いくらでもある。
 

真夜中のギター
万延元年のフットボール
ふしぎの国のアリス
1973年のピンボール
時計じかけのオレンジ
裏切りのサーカス
英国王のスピーチ
世界にひとつのプレイブック
逆襲のシャア
夏のクラクション
冬のオペラグラス
僕らのユリイカ
 

なるほど、この調子でいくともはや
 

方南町のコロッケ
 

ですらかっこいい。私に大ヒットだ。4つ買ってひとつはすぐ食べる。
 

それにしても、日本のドメスティックな自動車であるホンダ・プレリュードと、アラン・ドロン主演の映画との関係は考えてもさっぱりわからない。
 

結局これも要は「本田のアラン・ドロン」であり、その繋がりの不明さに心惹かれる部分があるのだろう。
 

そうだとしても、この車のCMの制作者は、単にフランス映画「地下室のメロディー」の映像と音楽が好きだったのであり、この車の本質とはまるで関係ないけど自分の好きな世界をみんなに見て欲しかったのだと思う。「商品から発想して長所を伝える」のが広告だという話もあるが、世の中、「好き」より強いことはない。18歳の私は、まんまとこの知らない人の「好き」にやられて200万だの払って満足したのだから、広告とか、いまもういちどこの「好き」を大事にして欲しいと思う。知らんけど。
 

さて、その後何台も車を乗り継いだ私であるが、15年ほど前から日産X-TRAILという車にずっと乗っている。走行距離は軽く10万キロを超えたが、底が抜けるまで乗りたい。これも15年前、テレビCMを見て「やられて」しまったのだ。


出典:カーセンサー

Reference:YouTube

この広告を作った人も、このCMで流れるザ・クラッシュの『 I Fought the Law』という歌が大好きだったんだろう。

Reference:YouTube

30歳も過ぎた私は、まんまとこの知らない人の「好き」にやられて200万だの払って満足した。
 

CMを見てもらえばわかるが、この車は4WDのタフなRVで、「悪路を越えて、海へ、山へ、キャンプへ、スノボへ!」というイメージに満ち溢れているが、私はこの車に乗って15年、この車で海にも、山にも、キャンプにも、スノボにも行ったことはないし、悪路も走ったことがない。でも満足なのである。「気分を買う」というのは、かなり人生にとって大事なのかもしれない。これ、車に限った話はしてないですよ。
 

さて、来週は第三水曜日なので、普段なら映画の雑談「エンタメ新党」の順番なのですが、あの問題の映画、じゃがりことまっくろくろすけの超大作「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の続編、映画「フィフティ・シェイズ・ダーカー」が6月23日に公開なのである。わたくし、2年待ちました。満を持してそれを観て、「エンタメ新党」は6月第4週にお届けしたいと思います。
 

みんな、じゃがりこ買ってね。
 

【過去5回の「ひろのぶ雑記」はこちら】
雑草という草はない
終わる事などあるのでしょうか
100円置くのとちゃいまっせ
蘇る勤労
あなたもわたしもプロ人間

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