ラストは、「アレ? ネイディーンちゃん、一気に成長したな? こんなあっさりメデタシメデタシなの?」っていう幕引きなんだけど、これでいいんです。いつも言うんですけど、「映画というのは2時間かけて広げた風呂敷を2時間たったら綺麗にたたむ芸」なんですから。
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もちろん万事解決、ではないんですよ。主人公は、大人の階段を一歩登っただけで、きっとこれからもいろんな劣等感や葛藤と闘って生きていくことでしょう。
でも、お兄ちゃんにはお兄ちゃんの葛藤がある。お母さんもお母さんの哀しみがある、先生には先生の人生がある。
みんなが自分のことだけ考えて生きてるんじゃない。それで世の中回っているし、自分の生きて行く役割も、居場所もできる。子供じゃなくなるっていうのは、そういうことに気づくことだと思うんです。自分のことだけを考えるのをやめたとき、ちょっと人は幸せになれます。
僕もいつまでたっても子供で、尊敬する人に叱られた言葉を、いまもなんとか、1ミリでも理解したいなあと思って生きてます。
子供とは何か、という質問に答えたある人の「人を傷つけたことに気付かず、人に許されていることに気付かない段階」という答えほど完璧なものはありませんでした
— 田中泰延 (@hironobutnk) 2013年8月2日
世界の薄皮を一枚剥いで、「見えるようになった瞬間」をスッと描いたこの映画は、はい、今も毎日劣等感や葛藤と格闘しているオッサンである僕にはちょっとウルっときました。僕だって17歳が中に入ったまま無理して47歳になったんですから。だからこそ「こじらせたまま大人になったすべての人に捧ぐ」なんですね。
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ファッションも、音楽もいいです。サントラの選曲がすごく良くて、しかもオリジナル・スコアのところはハンス・ジマーじゃないですか。だいたい、ヘイリー・スタインフェルドは「はじまりのうた」「ピッチ・パーフェクト2」ていう音楽映画の傑作に出てますからね。この映画の音楽話はぜひ『街角のクリエイティブ』の加藤広大さんにしてほしいですね。
監督のケリー・フレモン・クレイグも、主演のヘイリー・スタインフェルドも、これからたくさんいい映画に出てたくさん賞を獲るのは間違いないんで、いまこれを観ておくの、いいと思います。
あ、この映画、邦題 「スウィート17モンスター」ですけど原題は“The Edge of Seventeen”ですね。どっちも悪くないタイトルですが、待て。邦題はいいとして、カタカナ英語の邦題をもう一回英語で書くのは如何なものか。やりたい邦題かよ。
まぁ、そこも許せる、なんだか、ほっこりする映画です。考えさせられるとか、こんな映画的な仕掛けが! とか別にないんですけど、それも映画の幸せですね。
デートに最適、ロードショーが終わってたらDVDで観るのもいい、アメリカへ行く飛行機でたまたま観たらうれしい、年頃のお子さんがいる親御さんにもおすすめ、そんな映画です。
たまにはこんな平和な映画の話、いやあ、ほっとしました。また来月、エンタメ新党でお会いしましょう。次はきっとめんどくさそうな映画で、文字数ももっと多いでしょう。それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨ文字数