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歯医者というのは、実はものすごく奇妙な空間なのでは?

上田啓太 上田啓太


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こうなると、イップスというよりも、ただの馬鹿な気がしてくる。乳歯はべつに下ネタではない。思春期の中学生だろうが、そんな勘違いはしない。それでも私は我慢強く説明を続ける。乳歯が抜けると今度は永久歯と呼ばれるものが生えてくる。これがいわゆる普通の歯である。いま私の口の中にあるのも永久歯である。

「永久歯は永久に生えてるんですか?」

「いや、年をとるとこれも抜ける」

このへんで、私も説明しながら無理を感じはじめる。永久歯なのに抜けてしまうのは、やはりおかしい。永久歯と名乗る以上、百歳の老人の口の中にも問題なく生えているものであってほしかった。誇大広告のような名前をつけたのは誰だ。名づけの瞬間、テンションが上がっていたのか。十代の恋人がむやみに永遠ということばを使うようなものか。

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