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歯医者というのは、実はものすごく奇妙な空間なのでは?

上田啓太 上田啓太


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その後、おじさんはドリルを持ち出して、私の歯を削りはじめた。歯に空洞ができた。おじさんはそこに金属片を埋め込んだ。

こうなってくると、UFOに連れ去られた人間の体験談である。

彼らは私を椅子に座らせ、口の中をいじくりまわし、謎の器具でよだれを採取し(データがほしかったのでしょう)、歯の一部を削り、かわりに金属片を埋めこんでいきました。

別れ際には「オダイジニ」と言われました。異星の言葉でしょうか。

歯医者とイップス

たまに、当たり前のことが分からなくなる。歯医者はその一例である。治療されながら、その全体を訳の分からないものとして俯瞰ふかんしている。しかしまあ、私は患者なので、それほど問題はない。勝手に不条理を感じていればいいとは言える。医者のほうはてきぱきと治療を進めていくんだから。

むしろ、医者サイドが当たり前を忘れたときのほうが大変かもしれない。スポーツ選手がイップスと呼ばれる状態に入りこみ、それまで当たり前にやっていたプレイができなくなるなんて話があるが、これが歯医者に起こると大変だろう。歯医者が自分の仕事を忘れて呆然とするのだ。

「あれ? すみません、口ってどこでしたっけ?」

横になった状態で言われると恐すぎる。しかし当たり前が分からなくなるというのは、そういうことなのだ。目の前に患者がいる。それは分かる。口の中の何かを治療する。それも分かる。しかし、口がどれなのか分からない。これが歯医者のイップスである。

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