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歯医者というのは、実はものすごく奇妙な空間なのでは?

上田啓太 上田啓太


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数年前、虫歯の治療で歯医者に行った。久しぶりの歯医者だった。

それで感じたのは、歯医者というのはずいぶん奇妙な場所だということだった。小さな頃から当たり前のように存在しているから麻痺しているが、歯医者ほど変な場所もない。これまで違和感を持たなかったのが不思議なほどだ。

歯医者がいかに奇妙な場であるかを知るために、一連のプロセスを描写してみよう。

私は待合室にいた。名前を呼ばれ、中に入った。そこには知らないおじさんがいた。私は椅子に座らされた。背もたれが倒された。おじさんに口をあけろと言われ、言われたとおりにした。おじさんは私の口の中に太い指を突っこんだ。

これが何よりも奇妙なところである。

知らないおじさんに口の中に指を突っこまれる。なぜ、そんな事態になってしまうのか。普通、人は口の中に指を入れられることを嫌がる。ひとまず私は嫌である。

もちろん知らないおじさんサイドだって、初対面の若造の口に指を突っこむのは嫌だろう。私はフェアな人間であるから、自分を一方的に被害者にはしない。口に指を突っこむ側、突っこまれる側、どちらにも心理的抵抗があるはずだと言っている。

おじさんが私の口に指を突っこんでいるあいだ、横にいた女は謎の器具で私のよだれを吸い取っていた。これも奇妙だった。初対面の男の口の中に指を突っこむおじさん、突っこまれて平然としている自分、謎の器具でよだれを吸い取っている女、それぞれがそれぞれに発狂していると思った。

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